ブラジル音楽の豊穣そのもの。MPBレジェンド、ジョアン・ボスコ新譜

João Bosco - Abricó-de-Macaco

ジョアン・ボスコ新譜『Abricó-de-Macaco』

ブラジル音楽のレジェンドの一人、ジョアン・ボスコ(João Bosco)の3年ぶり新譜『Abricó-de-Macaco』は、ブラジル音楽の真髄とクリエイティヴなイマジネーションに満ちた素晴らしく充実したアルバムだ。

今作にはゲストとしてイスラエル出身で近年はサンバ/ショーロに傾倒するクラリネット/サックス奏者アナット・コーエン(Anat Cohen, トランペットのアヴィシャイ・コーエンの妹)や、リオを代表する若いサンビスタによるグループ、セグンダ・ラパ(grupo Segunda Lapa)の面々も数曲で参加。

収録曲は2019年10月にスタジオセッションで収録されたもので、過去の自身のヒット曲を中心に構成されている。新曲はソロで演奏される(2)「Abricó-de-Macaco」と、エルメート・パスコアールが共作者としてクレジットされた前衛的な(7)「Horda」のみだが、どの曲も新鮮なアレンジが施されており真新しく聴こえる。
スタンダードのカヴァー(9)「My Favorite Things」や(11)「Água de Beber」も絶品だ。

ジョアン・ボスコの弾く豊かな響きのヴィオラォン(ガットギター)、軽妙に刻まれるサンバを基調としたリズム、ふくよかな詩情など、このアルバムはブラジル音楽の豊穣そのものだ。

(4)「Cabeça de Nêgo」のMV。
オリジナルは1978年作『Cabeça de Nêgo』に収録されていた曲。
アナット・コーエンのソプラノサックスも冴え渡る。
(1)「Mano Que Zuera」
グナワ音楽のゲンブリを思わせるベースの印象的なイントロに導かれ、ジョアン・ボスコらしい静かにほとばしる歌唱と演奏がジャジーに繰り広げられる。
息子であり作詞家のフランシスコ・ボスコとの共作で、初出は2017年作『Mano Que Zuera』に収録。

ジョアン・ボスコは1946年生まれだが、とても70代も半ばとは思えないほどにその演奏も歌唱も瑞々しさと情熱を失わない。5月のはじめにデビュー当時からの盟友である作詞家アルヂール・ブランキ(Aldir Blanc)が新型コロナウイルス感染症によって亡くなってしまったが、それによって意気消沈するでもなく、むしろそんな困難な状況でこそ彼は創造意欲を失わずに前進していくのではないかと思わせてくれる。ブラジルはコロナ禍とその対策に後ろ向きな政治のためにひどい社会情勢だが、彼の音楽は今の時代にこそ必要とされているのではないだろうか。

本作はジョアン・ボスコ本人による楽曲解説も収録されたバージョン『Abricó-de-Macaco (versão Comentada)』も配信されており、ポルトガル語を解する方ならより楽しむことができるだろう。

João Bosco – vocals, guitar
Ricardo Silveira – guitar
Kiko Freitas – drums
Guto Wirtti – bass

Guests :
Anat Cohen – soprano saxophone, clarinet


grupo Segunda Lapa :
Moyseis Marques
João Cavalcanti
Alfredo Del-Penho
Pedro Miranda

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