アントニオ・アドルフォ、ミルトン・ナシメントに捧げる渾身の一枚
もう70代も半ばだというのに異常なペースで新譜を出し続けるブラジルの職人的ピアニスト、アントニオ・アドルフォ(Antonio Adolfo)。新譜はなんとミルトン・ナシメント曲集!
『Bruma: Celebrating Milton Nascimento』は全9曲がブラジルを代表するSSW、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)の楽曲のカヴァー。それも超有名曲ばかりでなく、ミルトンのベスト盤などにはセレクトされていなさそうな選曲も多いところが実に彼らしい。(1)「Fe Cega Faca Amolada」、(2)「Nada Sera Como Antes」、(4)「Cancao Do Sal」、(5)「Encontros E Despedidas」あたりは比較的知られている曲だと思うので、ぜひこのあたりから聴いてもらいたいが、バンド編成は管楽器も加えた中規模の編成で、ミルトンの名曲が丁寧にアレンジされ蘇っている。
ミルトン・ナシメントの楽曲は洗練からは少し離れた野性的な感性こそが魅力だと思うが、そんな野生児の楽曲をジャズサンバ職人アントニオ・アドルフォがアレンジしていることに多少の違和感を拭きれないままに聴き始めていた。
だが、このアルバムに収められた音を聴いて安心した。
ミルトン特有の唐突なリズムの転換も、複雑な和音も、アントニオ・アドルフォの“オマージュ以上の愛”が温かく伝わってくる素晴らしいアレンジが原曲の温もりをそのままに伝えてくれている。これはブラジル音楽を知り尽くしたアントニオ・アドルフォこそが為せる業なのだろう。
Antonio Adolfo – piano
Jesse Sadoc – trumpet, flugelhorn
Marcelo Martins – alto flute, tenor saxophone
Danilo Sinna – alto saxophone
Rafael Rocha – trombone
Claudio Spiewak – electric guitar (1,2,4,6), acoustic guitar (3,4,5,9), percussion (4)
Lula Galvao – guitar (7,8)
Leo Amuedo – guitar (9)
Jorge Helder – double bass
Rafael Barata – drums, percussion
Dada Costa – percussion (1,2,6,7,8)
Andre Vasconcellos – double bass (2)