チェロ三重奏とヴォーカリストたちが奏でるアルゼンチン音楽・美の極致

Flor Sur Cello Trio - Andorinha

美しすぎるチェロ三重奏、Flor Sur Cello Trío の2ndアルバム

アルゼンチン・コルドバを拠点に活動する女性チェリスト3人によって結成されたフロール・スール・チェロ・トリオ(Flor Sur Cello Trío)が最高だ。クラウドファンディングを通じて2018年にリリースされたデビュー作『Nido』につづき、2020年にリリースされた2ndアルバム『Andorinha』も文句なしに素晴らしい内容だった。

今作では結成時のメンバーだったルクレシア・カリゾ(Lucrecia Carrizo)が脱退し、彼女の代わりに加入した男性チェリスト、パブロ・ドリンスキ(Pablo Doliñski)も録音時の欧州ツアーに参加できなくなるという複雑な経緯を辿った挙句、彼の代わりとして(あくまでゲストの扱いで)男性チェリストのマウロ・ヘンティレ(Mauro Gentile)が録音に参加しているが、チェロのみならずギターやヴォーカル、作曲も担当する彼の貢献度は大きく、カヴァー曲ばかりだった前作からより一層のオリジナリティを獲得した驚くべきクオリティの作品に仕上がっている。

アルバムはペルーを代表するギタリスト、マヌエルチャ・プラド(Manuelcha Prado)作の(1)「Trova de Amor」で幕を開ける。美しいチェロの三重奏に導かれるイントロの後に聴こえるマウロ・ヘンティレのヴォーカルが素晴らしい。

マヌエルチャ・プラド(Manuelcha Prado)作の(1)「Trova de Amor」

今作でのイチオシはマウロ・ヘンティレ作の(5)「Desprender」。
本作では唯一のドラムスが入る曲で、これはアカ・セカ・トリオなどの近年のアルゼンチン・フォルクローレが好きな方は絶対にハマるアレンジだと思う。

(5)「Desprender」はピンチヒッターとして参加したチェリスト、マウロ・ヘンティレのオリジナル曲。
限りなく美しいメロディーとチェロやギターの伴奏に心が癒される名曲。

(7)ではアルゼンチンのシンガー、アイレナ・オルトゥーベ(Airena Ortube)がゲスト参加。アルゼンチンの人気バンド、デゥラティエラ(Duratierra)の曲を淑やかに歌う。

そして極めつけはガブリエラ・ベルトラミーノ(Gabriela Beltramino)が歌うラストに収録されたジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)の名曲(8)「Both Sides Now」。チェロの三重奏とアリエル・ロドリゲス(Ariel Rodríguez)によるピアノがこの上なく美しく響く。

この作品は近年注目を集めるアルゼンチン音楽界隈の中でも、特におすすめできる傑作だ。

ガブリエラ・ベルトラミーノの美声が胸に染み入る(8)「Both Sides Now」

Flor Sur Cello Trío :
Ailín Gazzo – cello
Eugenia Menta – cello
(Pablo Doliñski – cello)

Guests :
Mauro Gentile – cello, vocals, guitar
Ariel Rodríguez – piano (2,8), accordion (4)
Dante Ascaino – guitar (3)
Mery Murúa – vocals (4)
Jonathan Szer – drums (5)
Airena Ortube – vocals (7)
Gabriela Beltramino – vocals (8), chorus (5)

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