サンパウロのピアニスト、マルタ・カラサワ新作
ブラジル・サンパウロのピアニスト/作編曲家マルタ・カラサワ(Marta Karassawa)がブラジルを代表する名手たちを擁するクインテットで録音した『Tempo Bom』。
クインテットのメンバーはピアノのマルタのほか、フルート/サックスのテコ・カルドーゾ(Teco Cardoso)、トランペット/フリューゲルホルンのセヂマール・ヴィエイラ(Sidmar Vieira)、ベースのドイツ出身サンパウロ在住フランク・ハーツバーグ(Frank Herzberg)、そしてドラムスのゼー・エドゥアルド・ナザリオ(Zé Eduardo Nazário)という構成で、いずれも長年ブラジルのジャズの第一線で活躍する凄腕だ。
アルバムの12曲は全てマルタ・カラサワのオリジナル。グルーヴィーなジャズサンバ(1)「Cama de Gato」はアイルト・モレイラ&フローラ・プリンの「Partido Alto」に触発された曲ということで、冒頭から気分を高めてくれるトラックだ。グアドループ出身のテナーサックス奏者ジャック・シュワルツ=バルト(Jacques Schwarz-Bart)がゲスト参加しており、卓越したソロを聴かせる。
複雑なメロディーが印象的な(2)「Mantra」にはシンガーのステファニー・ボルガニ(Stephanie Borgani )がゲスト参加し、素晴らしいスキャットを披露。
アルバムの曲種はサンバやボサノヴァ、バイアォンといったブラジル音楽に基づくジャズから、ブルースやフュージョン、スウィングなどアメリカで発展した曲調のものまで実に幅広い。ボストンのバークリー音楽大学で学び、25年以上の音楽のキャリアを持つという彼女の好奇心が凝縮されたような渾身の作品となっている。
ソロピアノで演奏される小品(8)「Stefan e Clarinha」からスウィング・ジャズ(9)「Simple as that」への流れなど、アルバムの構成も良い。
マルタ・カラサワはこれまであまり話題になることのなかったピアニストだと思うが、今作で一気にその知名度を上げることだろう。
Marta Karassawa 略歴
マルタ・カラサワはリオデジャネイロ州ニテロイに生まれた。両親はエンジニアと建築家という家庭で、音楽に携わってはいなかったが、音楽は家族の中でも常に特別な位置を占めていたようだ。
マルタは7歳からピアノを習い始めたが、最初は趣味でしかなかった。時が経つにつれて彼女の音楽への愛は深まり、ブラジルで建築と都市計画を学んだ後も、音楽への情熱が彼女のキャリアのベクトルを変えていった。彼女は奨学金を得て米国の名門バークリー音楽大学へと渡り、ダニロ・ペレス、ホレス・シルヴァー、パット・メセニーとったジャズ界のレジェンドから学ぶという機会を得た。バークリーでは演奏と編曲を優秀な成績で修めた。
2001年にマルタ・カラサワ・クインテットを結成。1940年代以降の古いジャズへのリスペクトに満ちた音楽性を軸に劇場やクラブ、フェスティヴァルなどに出演。音楽のキャリアは長いが、アルバムとしては今作『Tempo Bom』が1stのようだ。
Marta Karassawa – piano, keyboards
Teco Cardoso – flute, saxophone
Sidmar Vieira – trumpet, flugel horn
Frank Herzberg – contrabass
Zé Eduardo Nazário – drums
Guests :
Jacques Schwarz-Bart – tenor saxophone (1)
Stephanie Borgani – vocal (2)
Chico Macedo – baritone saxophone (11)