マルディン(Myrddin)、注目のソロ・フラメンコギター新譜
スペイン人以外のフラメンコ・ギタリストは伝統的なものに縛られすぎていない人が多く、個人的にとても好きだ。当サイトではこれまでにもアルメニア出身のバハグニ(Vahagni)や、イスラエル出身のノア・ドレズナー(Noa Drezner)といったギタリストたちに焦点を当て紹介してきた。彼らはコンテンポラリー・フラメンコとも呼ぶべきスタイルで、フラメンコギターの他に類を見ないかっこよさをそのままに、時代に合った音楽を聴かせてくれる素晴らしいギタリストだと思っている。
今回紹介するのはベルギー出身のフラメンコギタリスト。名はマルディン・デ・カウター(Myrddin De Cauter)、左利き。
高名な音楽家の父がいる家庭で育った彼は10代でフラメンコ音楽に出会い没頭。スペインに行き修行を積んだという経歴の持ち主である。
多彩なゲストを迎え、コンテンポラリー・フラメンコの最前線を魅せた前作『Rosa De Papel』から5年。ギタリストとしてさらに磨きをかけた4枚目のアルバムとなる新譜『Monstruos Y Duendes Vol. 1: Myfyrio』(2020年)をリリースしたが、これは全編ソロで聴かせるベルギー産フラメンコギターがとにかく素晴らしい作品だ。圧倒的なテクニックと叙情性も持ち合わせた彼のギターはまさに極上の逸品。フラメンコギターの奏法を総動員した力強いサウンドが聴いていて本当に気持ちいい。
彼の音楽の入門としてはギターの他に様々な楽器や歌も入った『Rosa De Papel』(2015年)に軍配が上がるが、ギタリストやフラメンコギターを愛する方はぜひこちらの作品も聴いてほしい。
音楽一家に育ち、チェリストの娘も2018年にデビュー
マルディン・デ・カウターは音楽的に恵まれた環境で育った。父親はストケロ・ローゼンバーグ(Stochelo Rosenberg)と共演するなどマヌーシュ・ジャズ界隈で知られるマルチ奏者のコエン・デ・カウター(Koen De Cauter)。二人の兄もミュージシャンだ。
そして2018年には娘のイムレ・デ・カウター(Imre De Cauter)もデビューし、親娘共演を果たしている。