コンテンポラリー・フラメンコギターを代表する José Carlos Gómez
コンテンポラリー・フラメンコを代表するスペインのギタリスト/作曲家、ホセ・カルロス・ゴメス(José Carlos Gómez)。
多様な作風で知られる彼だが、2020年の新譜『Calle Santa Ana』は広く絶賛された2016年作『Origen』でのフラメンコ路線をより現代的に発展させた内容で、フラメンコギターの伝統をベースにしながらも他ジャンルからの影響を受けた個性的なオリジナル曲と、唯一カヴァー曲として収録されたスティーヴィー・ワンダーの名曲(2)「Overjoyed」で訴求力も十二分だ。
ホセ・カルロスはとにかく“巧い”ギタリストなのだけど、アルバムでは全体的にギターが前面に出過ぎることはなくバランスが保たれている。演者として優れているのは勿論だが、後述するプロフィールの通り彼の本質はシンガーソングライター的な部分にあるため、作曲やアレンジも含めた総合力で優れた作品として仕上がっている印象を受ける。
スティーヴィー・ワンダーのカヴァー(2)「Overjoyed」ではハーモニカ奏者のアントニオ・セラーノ(Antonio Serrano)を迎え、フラメンコの要素も加えた軽やかなアレンジがとても良い。フラメンコではあまり見られない原曲の巧みな転調の連続のためか、どこかブラジリアンな雰囲気も漂う素晴らしいアレンジになっている。
早熟なギタリスト、ホセ・カルロス・ゴメス
ホセ・カルロス・ゴメスは1972年にアンダルシア州アルヘシラスに生まれた。3歳の頃にテレビで見たパコ・デ・ルシアに憧れ、5歳の誕生日に両親からフラメンコギターを贈ってもらったという。
11歳の頃には既にソリストとして演奏できるほどの腕前に。16歳の頃にはアンダルシア全土にその名が知られるほどのギタリストとなった。
1991年にはスペイン国立バレエ団(Ballet Nacional de España)にギタリスト/作曲家として参加し、体調を崩してしまう1997年まで多くの舞台で演奏をした。
腎臓移植に伴う静養後、現場に復帰してからはスペインの人気歌手ニーニャ・パストーリ(Niña Pastori)のアルバム『Cañailla』(2000年)にギタリスト/作曲家として参加するなど、再び優れた音楽家としての信頼を積み重ねていった。
ソロデビューは2010年、多様な経験で身に付けた音楽性で際立つ
このように幼少時から驚くべき才能を見せたホセだが、ソロアーティストとしてのアルバムデビューは意外と遅く、2010年のセルフタイトル作『José Carlos Gómez』でデビュー。これはフラメンコ色は薄く、ナイロン弦のフラメンコギターの他に鉄弦のフォークギターも用いたり、メインヴォーカルもとるなどシンガーソングライター色の強い作品だった。
その後は多作で、デビュー時以来からのポップなSSW路線のものから、彼のフラメンコ・ギタリストとしての原点に立ち返り高い評価を得た2016年作『Origen』など多様な作品を発表している。
YouTubeにはホセ・カルロス・ゴメスがギターを始めるきっかけとなったパコ・デ・ルシアが、彼について語る動画もアップされている。