アミナ・フィガロヴァ新譜『Persistence(永続性)』
アゼルバイジャン出身で、マリア・シュナイダーと並ぶ最も影響力の強い女性ジャズ・アーティストと評される作曲家/ピアニストのアミナ・フィガロヴァ(Amina Figarova)。
2020年の最新作『Persistence』では、音楽シーンの流行の変化にも敏感な彼女のセンスが炸裂。今に生きる音を堪能できる快作となっている。
いつも通り多彩な展開に加え、今作では生ピアノ以外にもローズピアノの使用やバート・ブラトーのウインドシンセといった“電化サウンド”が目立つ。それでも基盤となる楽曲自体の作り込みは流石で、音色で誤魔化されるような印象は全くなく、各人のアドリブも含め聴き込み、構成を分析したい欲に駆られる。
カルテット編成の今作はピアノのアミナ・フィガロヴァ以下、ギターにパキスタン出身アメリカ育ちのレズ・アバシ(Rez Abbasi)、フルートとウインドシンセに長年の音楽パートナーでもある夫のバート・プラトー(Bart Platteau)、ベースに東京生まれ・シアトル育ち、バークリー音楽大学とジュリアード音楽院の両名門校を卒業したという中村恭士(Yasushi Nakamura)、そしてドラムにルディ・ロイストン(Rudy Royston)という布陣だ。
今作にはチャレンジングなゲストも参加。
(2)「I’ve Got No Time」はゲストにラッパーのJSWISSが参加。アミナ・フィガロヴァにラップが絡むのは新鮮で、驚いた。
(6)「Horizons」にはヴォーカルにポール・ヨースト(Paul Jost)を迎え、ブラジリアン・ジャズにも通じる爽やかなテイストのサウンドを披露。(7)「Bliss」には“R&Bの新しい波”を標榜するスカイズ・ワールド(Skye’s World)がゲスト参加している。
アルバムに冠された「永続性(Persistence)」とは、時代の変化に対する彼女からの回答なのだろう。
アミナ・フィガロヴァ 略歴
アミナ・フィガロヴァ(Amina Figarova)は1964年アゼルバイジャン生まれ。
首都バクーでクラシックのピアニストとして才能を開花させたが、1988年にモスクワのジャズフェスティバルに招待されジャズへの関心を得て、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学。以降ニューヨークに在住し、10枚以上のアルバムを発表している。
アゼルバイジャンといえば近年は同地の伝統音楽を取り入れた“ムガーム・ジャズ”に多くの若手ピアニストが挑み、数々の名演がひとつのシーンの活況を見せているが、アミナ・フィガロヴァにはほとんどその傾向は見られず、完全にニューヨーク・ジャズの人になっている感がある。
Amina Figarova – piano
Rez Abbasi – guitar
Bart Platteau – Bb flute, EWI
Yasushi Nakamura – bass
Rudy Royston – drums
Special appearances by:
JSWISS – rap (2)
Paul Jost – voices (6)
Skye’s World – voices (7)