マティ・カスピが残したブラジル音楽名盤
イスラエルを代表するSSW、マティ・カスピ(Matti Caspi, ヘブライ語:מתי כספי)の1987年作『Eretz Tropit Meshaga’at』は知られざるブラジリアン名盤だ。
彼の1978年リリースのブラジリアン路線のヒット作『Eretz Tropit Yafa』の続編的内容で、マティ・カスピ自身の楽曲のほか、バーデン・パウエルやシコ・ブアルキといったブラジルのアーティストの名曲のカヴァーも多数収録されている。
ブラジル人によるバンドを従えてのショーで録音されたものだが、とにかくどの曲もレベルが高く、ヘブライ語で歌われるブラジル音楽という点でもとても面白い。バイアォンのリズムの(1)「Shir Bedui」はマティ・カスピのオリジナル。続くフォホーの名曲(2)「Forro Temperado」、面白いメロディ・アレンジが施されたバーデン・パウエルの(3)「Berimbau」、同じくバーデン・パウエルの(4)「Samba em prelúdio」はマティ・カスピのヘブライ語のヴォーカルの後、ブラジル人女性歌手シルヴィアによるポルトガル語ヴォーカルも。
(5)「Shir Erev」はマティ・カスピ作のサンバ。
シコ・ブアルキの(6)「Que Sera」のカヴァーも絶品だ。マティ・カスピの憂いを帯びた声、複雑な和声進行を泳ぐような女性コーラスが素晴らしい。
(7)「Bishvil Davar Echad Ein Koach」は再びマティ・カスピのオリジナルで、ここでも卓越した作編曲センスが炸裂。
哀愁のサンバ(8)「Trem das Onze」はサンパウロのサンビスタ、アドニラン・バルボーザの代表曲。この曲も前半がマティ・カスピのヘブライ語ヴォーカル、後半がシルヴィアによるポルトガル語ヴォーカルとなっている。
マルチーニョ・ダ・ヴィラの歌唱で知られる(9)「Casa de Bamba」、マティ・カスピのオリジナル(10)「Ma’asar Olam」と続き、最後はジョルジ・ベンによるブラジリアン・ファンク(11)「Pais Tropical」で締め括られる。
合計40分。最高に幸せになれる、ちょっと変わった“ブラジル音楽”の名盤だ。