UKジャズシーン発の新たな才能、ダニー・キーンのデビュー作

Danny Keane - Roamin'

ラーガ、アフロビート、ジャズ… UKジャズシーン発の新たな才能

イギリス・ロンドンで活躍する鍵盤/チェロ奏者/作曲家のダニー・キーン(Danny Keane)のデビュー作『Roamin’』は相当に中毒性のある傑作だ。様々なジャンルの要素を取り入れたバラエティ豊かな音楽性、時代の最先端を行く洗練されたサウンドのセンス、それでいて一枚のアルバムとしてのまとまりの良さや完成度、どれをとっても素晴らしい。

本作にはジャズ、インドの伝統音楽、アフリカのリズム、西洋クラシック音楽、そしてコンテンポラリー・ダンスミュージックなど様々な要素がふんだんに詰め込まれている。

楽曲によって編成を大きく変えているが、中核を担うのはサンズ・オブ・ケメット(Sons of Kemet)でも活躍するドラマー、トム・スキナー(Tom Skinner)や、カーシュ・カーレイやアヌーシュカ・シャンカールの作品にも携わってきたインド人パーカッショニスト、ピラシャンナ・テヴァラジャ(Pirashanna Thevarajah)。特に南インドの伝統打楽器に精通したピラシャンナ・テヴァラジャの演奏は本作の個性を特徴付ける大きな要素になっている。

(3)「Flight 19」ではダニー・キーンは鍵盤を演奏。
ピラシャンナ・テヴァラジャが叩く南インドの伝統楽器ムリダンガムも効果的だ。

ダニー・キーンはピアノやローズピアノ、シンセなどの鍵盤楽器とチェロを演奏。チェロは幼い頃から習い、ピアノは独学だというがどちらもアドリブも含めセンス抜群。(9)「Afro Cello」はその名の通りチェロ1本で多重録音を行い、チェリストとしての才能を発揮した1曲になっている。

チェロの多重録音による(9)「Afro Cello」
ピアノとベース、そしてFXで構成される(5)「Suspended Memory」

本作のハイライトとなる(6)「Addis」の冒頭ではエチオ・ジャズの巨匠ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)のピアノも聴くことができる。

唯一のヴォーカル曲(8)「The Water Is Wide」(スコットランド民謡)を歌うのはダニー・キーンの叔母のジェーン・キーン(Jane Keane)。
トーキングドラムのイントロに導かれ、アナログシンセやサックスで力強く進行するラストの(11)「I Am Analogue」も面白い。

ダニー・キーン、豊かな音楽的経験から生み出された一枚

本作の主人公、ダニー・キーンはこれまでにアヌーシュカ・シャンカール(Anoushka Shankar)、ニティン・ソーニー(Nitin Sawhney)、ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)といった国際的な音楽家のプロジェクトに関わってきており、このデビュー作までに10年以上のキャリアを積んできた。そうした多様な音楽文化の経験が彼の確かな基盤となり、今回の作品でアーティストとして見事に結実。多数のミュージシャンの協力も得てUKジャズの範疇に止まらない傑作を生み出した。

Danny Keane – piano, electric piano, organ, syhth, cello, percussion, programming
Charlie Winston – acoustic guitar
Dan Smith – effects
Ben Henry Edwards – harmonica
Pirashanna Thevarajah – mridangam, morchang, ghatam
Sam Walker – percussion
Aref Durvesh – dholak
Tom Skinner – drums
Richard Olatunde Baker – percussion, talking drum
Charlie Winston – piano, synth
James Arben – tenor saxophone, baritone saxophone
Ian Ritchie – tenor saxophone
Byron Wallen – trumpet
George Simmonds – trombone
Ed Ashby – tuba
Seth Bennett – double bass
Aref Durvesh – tabla
Max Baillie – viola
Oli Langford – violin
Tom Pigott-Smith – violin
Geoff Southall – brass
Mulatu Astatke – piano
Khadijatou Doyneh – spoken word
Jane Keane – vocal


Aref Durvesh, Byron Wallen, Charlie Winston, Danny Keane, James Arben, Pirashanna Thevarajah, Sean Douglas, Geoff Southall, Matt King Smith, Richard Causon – vocals

Danny Keane - Roamin'
Follow Música Terra