大物ミュージシャンとの共演で磨かれた豊かな世界観
「ディーバ!!」
先日参加したジャムセッションで、彼女がトム・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)の「Dindi」を歌い終えると、場内に大歓声があがった。
パリ生まれの So ことソフィー(Sofy)は、もとはダンサー。
仲間から「歌うまいよね。歌ってみたら?」と言われて、20歳のとき、フランスで有名なレゲエアーティスト、トントン・デイビッド(Tonton David)のバックコーラスのオーディションを受けたところ一発合格。さっそくツアーメンバーに加わることになり、ボーカリストとしての彼女のキャリアがスタートした。
その後もロッド・スチュアート(Rod Stewart)やカニー・ウィリアムズ(Cunnie Williams)、オーディション番組『VOICE』のフランス版でコーチとしても人気のシンガー、アメル・ベント(Amel Bent)ら、大物アーティストとともに世界中を周り、ディズニーランドで公演された『Lion King』ではラフィキ役で舞台にも立っている。
ゴスペルグループに参加したり、パリの人気ライブハウス、Bizz’art では10年間毎週欠かさずライブを続け、So はパフォーマンス技術を磨いた。
2018年に収録したミニアルバム『Joy § Peines』は、全曲彼女の書き下ろし。
パーカッションの絡みと、どこまでも伸びていく So の高音ボイスが最高に気持ちいい2曲目の「Are You Ready」は、彼女いわく、「いまでも思い続けている」昔の恋人を思って書いた曲。
「ありのままの私を愛してくれる覚悟はある?」という歌詞がなんともやるせない・・・。アコースティックギターを伴奏に歌った5曲目のバージョンはまたまったく違った味わいだ。
3曲目の「Musik」 はフランス語のナンバー。のびやかなグルーブに違和感なくフランス語を乗せているのはさすが。
一度聴いたらメロディーが頭の中にループする「Is It a Crime」は、空想のストーリーから書いたもの。イメージは“メアリー・J・ブライジ(Mary J Blige)風”だそう。
驚くのは、独学で曲作りを習得したとは思えない、処女作にしてこの完成度の高さだ。
アレンジを担当したのはゴスペルグループのメンバーで、バックコーラスにも参加している彼のミキシングも見事。
バックコーラスが絶妙に効いているのは、長年熟練ミュージシャンたちと共演してきた彼女の腕の見せどころ。これまで多くの場数を踏んできたことで、表現したい世界観がすでに鮮明に彼女の頭の中に描かれている感じがする。
現在彼女は、理論からジャズを勉強中だ。
もう10年以上も前のこと。パリで一番人気のボーカルコーチ、アメリカ人ジャズシンガーのサラ・ラザルス(Sara Lazarus) のレッスンを受けたとき、
「あなたの地声は、ジャズにぴったりよ」
と言われたことが、いつも頭の片隅にあった。
バックコーラスやR&Bでは高音を使っていたけれど、自分の本来の声を生かせるジャンルがあることに、彼女はそのとき気づいた。
So が目指すのは、アニタ・ベイカー(Anita Baker) やキム・バレル(Kim Burrell)のような、R&Bやゴスペルにジャズのエッセンスを加えたスタイルだという。
コロナ禍が落ち着いたら、ジャズアルバム第一弾の制作に取り掛かるという。
待ち遠しい!