クラリス・アサド、民族を構成する12のキャラクターを描く新作

Clarice Assad - Archetypes

鬼才クラリス・アサド、父セルジオと打楽器アンサンブルとの共作新譜

ブラジル系アメリカ人の歌手/作曲家/マルチ奏者のクラリス・アサド(Clarice Assad)の新譜『Archetypes』が、美しさと狂気に満ちた(もちろん褒めてる)素晴らしい作品だったので紹介したい。

共演者はクラリスの父であり世界的ギタリストのセルジオ・アサド(Sergio Assad)、そして米国のグラミー賞受賞経験のある打楽器集団サード・コースト・パーカッション(Third Coast Percussion)。クラリス・アサド作曲による組曲形式の12のトラックにはそれぞれアルバムタイトルの“アーキタイプ” = 民族を構成する典型に因む下記の副題が付けられている。

  1. Rebel(反逆者)
  2. Innocent(無実)
  3. The Orphen(孤児)
  4. The Lover(恋人)
  5. The Magician(魔術師)
  6. The Ruler(支配者)
  7. The Jester(道化師)
  8. The Ceregiver(弁護士)
  9. The Sage(賢者)
  10. The Creator(造物主)
  11. The Hero(英雄)
  12. The Explorer(探検家)

本作はタイトルの意味を知った上で各楽曲を聴くと想像が膨らむ。

(1)「Rebel(反逆者)」がいきなり面白い。これは聴く立場によっても印象が異なるようにできている。保守的な人物にとっては心の平穏を脅かすサウンド、創造的な人物にとっては常識に囚われない斬新なサウンド。
(4)「The Lover(恋人)」はスティーヴ・ライヒのようなミニマルなポリリズムで進行する曲で、ピアノ、ギター、マリンバといった組み合わせが、それぞれの音色は温かいのに何故か無機質な印象を与える。
(7)「The Jester(道化師)」などはビヨンビヨンした口琴で始まるコミカルな曲調が最高に楽しい。
(11)「The Hero(英雄)」は使命感に溢れているし、ラスト(12)が「The Explorer(探検家)」というチャレンジングなアレンジの曲で幕を下ろすのも良い。

巧みな作曲の妙。そして主にピアノとギター、各種パーカッションの緻密なアンサンブルがこれらの想像上のストーリーの世界に誘う。現代音楽の楽しさが詰まった素敵な作品だ。

アルバムの紹介動画。

クラリス・アサド(Clarice Assad)は1978年ブラジル生まれ。父は“アサド兄弟”の兄セルジオ・アサド。
父親の指導で6歳頃から曲を書き始め、7歳からプロとしての活動を始めた。10代の頃に家族とともに一時的にフランスに移住、20歳頃に米国に移住している。
その長いキャリアの中で、これまでに7枚のソロアルバムを発表。ほかに30枚以上の作品に客演をしている。

Clarice Assad – voice, piano, bass guitar
Sergio Assad – guitar

Third Coast Percussion :
Sean Connors – percussion
Robert Dillon – percussion
Peter Martin – percussion
David Skidmore – percussion

Clarice Assad - Archetypes
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