スナーキー・パピー首謀者マイケル・リーグ、中東音楽を消化した初ソロアルバム

Michael League - So Many Me

マイケル・リーグ初ソロアルバム『So Many Me』

大世帯バンド、スナーキー・パピー(Snarky Puppy)を率いるベーシスト/マルチ奏者/作曲家のマイケル・リーグ(Michael League)の初ソロ作『So Many Me』は、そのタイトル通り全ての楽器やヴォーカルをマイケル・リーグ自身が担う、驚くほど内向きで、それでいてマーブル模様のように豊かな音が散りばめられたアルバムだ。

多数のトッププレイヤーが集い、互いに化学反応しながら爆発的なエネルギーを生むスナーキー・パピーのバンドサウンドとは随分とかけ離れており、そのベクトルはマイケル・リーグ自身に向かっている。パンデミックの社会状況下でほぼ一人で制作された作品であることも大きく影響しているかもしれないが、スナーキー・パピーのサウンドを通じてはなかなか知ることができなかった彼の意外な一面を聴くことができる。

重層的に重なるシンセサイザーのヘヴィーな和音も特徴的だが、さらにトルコやモロッコのパーカッションが繰り返し重ねて使用されていることにも気が付く。逆に現代のポピュラーミュージックではほとんど欠かすことのできないドラムセットは今作では一切使われていない。
近年中東の音楽家とのコラボレーションも積極的に行うマイケル・リーグが受容してきた音楽が、彼のフィルターを通してアウトプットされた新しいワールド・ミュージックの形を創ろうとしているようにも聴こえて興味深い。

例えば、グナワの楽器を取り入れた(8)「In Your Mouth」などは現代的なセンスでアフリカ音楽を消化したとても良い例となっている。エフェクターとアンプを通したゲンブリ(モロッコの弦楽器)の低音で始まる変則的なリズムのこの曲は、アフリカ音楽と中東のパーカッション、そして西洋のロックやジャズ、ファンクなどのエッセンスが高次元に混ざり合った驚くべきサウンドだ。

少し歪ませたゲンブリのベースライン、コーラス部での驚くほどの音響的な広がりが印象的な(8)「In Your Mouth」

グラミー賞4度受賞、現代ジャズのキーマン

マイケル・リーグ(Michael League)は1984年カリフォルニア生まれ。13歳でギターを始め、17歳からバンドでベースを弾き始めている。大学でジャズのキャリアを積み、その後ニューヨークのブルックリンに移り住んでいる。

近年は中東や北アフリカの打楽器を学ぶために数ヶ月間トルコやモロッコに滞在し現地の指導者に師事。その影響は今作のサウンドに強い個性を与えた。

彼の代名詞であるバンド、スナーキー・パピー(Snarky Puppy)はノーステキサス大学在籍時の2004年に結成。地元で開催された権威ある音楽賞ダラス・オブザーバー音楽賞を2008年から2010年まで3連覇し、2014年にはグラミー賞を初受賞。その時々でメンバーは流動的に入れ替わるスタイルで“最も売れているジャズバンド”として現在の音楽シーンを牽引し続けている。

(3)「Right Where I Fall」
(5)「I Wonder Who You Know」

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