バラバン、ズルナで奏でる絶品オリエンタル・ジャズ!アラフサル・ラヒモフ『Panik』

Alafsar Rahimov - Panik

ムガームにとどまらない絶品オリエンタル・ジャズ

アゼルバイジャン生まれの木管楽器奏者アラフサル・ラヒモフ(Alafsar Rahimov)の新譜『Panik』は、ピアノにアゼルバイジャンのエティバル・アサドリ(Etibar Asadli)、ベースにコソボ生まれのエンヴァー・ムハメディ(Enver Muhamedi)、そしてトルコのドラマー、イーキン・チェンギスカン(Ekin Cengizkan)という若手の俊英たちを迎えたムガームジャズの範疇にとどまらないオリエンタル・ジャズの絶品だ。

アラフサル・ラヒモフが吹くバラバンやズルナといった伝統楽器を軸に、微分音も駆使したメロディーやアドリブはこの地方の現代ジャズならでは。
ゲストには1984年生まれのエルヌル・フュセイノフ(Elnur Huseynov)と1957年生まれのアリム・カシモフ(Alim Qasimov)というアゼルバイジャンの新旧二人の名歌手も一部楽曲で参加し、アルバムに豊かなバリエーションを与えている。

(1)「Panik(Panic)」は勢いのあるクレズマー調の楽曲で、オーボエと同じダブルリード楽器であるバラバンの魅惑の音色を存分に楽しめる。中間部での高速フォービートに乗ったエティバル・アサドリの技巧的なピアノソロも聴きどころだ。

クレズマー音楽を思わせる(1)「Panik」

(5)「Feridem」では、アラフサル・ラヒモフはズルナを演奏。ズルナは屋台のラーメン屋さんでお馴染みのチャルメラのルーツで、甲高い音色もそっくり。なかなかユニークなジャズ・フュージョンとなっている。

前述のバンドメンバーの演奏もそれぞれが個性的で、アンサンブルも抜群に上手い。
アルバム全編にわたり、なかなか他では聴くことのできないジャズ。世界の広さや音楽の奥深さを知るにもうってつけの一枚だ。

ズルナのユニークな音色が特徴的なジャズ・フュージョン(5)「Feridem」

アラフセル・ラヒモフ 略歴

アラフセル・ラヒモフの祖父はアゼルバイジャンで著名なズルナ奏者のエレフセル・セキリ(Elefser Şekili)。
10歳の頃から伝統楽器バラバン(別名:ドゥドゥク。アゼルバイジャンやアルメニアを中心に演奏されているダブルリードの楽器)の演奏を始め、アゼルバイジャン州立音楽院でムガームやジャズを学んできた。

伝統的な音楽であるムガームに根ざしながらも、現在の演奏のフィールドはジャズを中心としており、バラバンの演奏に革新を呼び込んだと言われている。一方でロックを演奏したり、アゼルバイジャンの交響楽団でソリストも務めるなどその活動の幅は広い。
アメリカ、ヨーロッパ諸国、中国、韓国、台湾、シンガポール、モロッコ、チュニジアなど世界各地で公演を行い、2011年にはモントルー・ジャズフェスティヴァルにも出演。

2019年からトルコのイスタンブールに拠点を移し、中東諸国の伝統音楽を研究したり、国内外のアーティストと数多くの共演を重ねるなど際立った活動を行っている。

Alafsar Rahimov – balaban, zurna, vocal
Etibar Asadli – piano
Enver Muhamedi – electric bass
Ekin Cengizkan – drums

Guests :
Elnur Huseynov – vocal
Alim Qasimov – vocal

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