歌姫ナタリア・ラフォルカデが歌う“メキシコのための歌”第二弾

Natalia Lafourcade - Un Canto por México, Vol. II

歌姫ナタリア・ラフォルカデが歌う“メキシコのための歌”第二弾

デビュー当時、ふざけたキャッチコピーとともに日本にもセンセーショナルに紹介されたナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)の最近のプロジェクトは本当に素晴らしくて見違える。

前作に続き、故郷メキシコの文化を深くリスペクトした『Un Canto por México, Vol. II』も非常にクオリティの高い、素晴らしいアルバムだ。ここには伝統曲やカヴァー曲、ナタリア・ラフォルカデ自身の作による楽曲が収録されている。アレンジは古風でシンプルだがいずれも丁寧で真心が込められている。

まず目を惹かれるのが、アレンジを変えて2度にわたり登場するメキシコで最も有名な伝統曲のひとつ(1)(8)「La Llorona」だろう。「哀しきジョローナ」の邦題でも知られるこの曲は特異な死生観を持つメキシコの文化を強烈に反映している。ナタリア・ラフォルカデはこれまでの作品でもこの曲を取り上げてきたが、今作ではガットギターとトランペットのシンプルな伴奏で歌われる1曲目と、2本のギターとストリングス・管楽器などの丁寧なアレンジが施された8曲目で、この捻れた愛情と嫉妬が生んだ悲劇をそれぞれ劇中の主人公のような豊かな表現力で歌い上げており、彼女の深く美しい歌声は妖艶な幽霊を想起させる。

LAの歌手のミゲル(Miguel)とともにナタリアが主題歌を務めた映画『リメンバー・ミー』から、アカデミー賞歌曲賞を受賞した(7)「Recuérdame」の再演も嬉しい。ここではメキシコのポップシンガー、カルロス・リベラ(Carlos Rivera)とのデュエット相手として登場し、伸びやかな歌声を聴かせてくれる。

驚きのゲストは、(9)「Soy Lo Prohibido」を歌うブラジルの巨匠カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)だ。
アルゼンチンの作曲家ディーノ・ラモス(Dino Ramos)が作り、ラテン圏で大ヒットしたこの曲をカエターノはスペイン語で歌っている。

メキシコの伝統音楽ソン・ハローチョのバンド、ロス・コッホリーテス(Los Cojolites)との共演曲(6)「Nada Es Verdad」

メキシコの国民的歌手、ペドロ・インファンテが1950年代に歌った名曲(2)「Cien Años」をナタリアとともに歌うのはグラミー賞4度受賞のメキシコのレジェンド、ぺぺ・アギラール(Pepe Aguilar)。原曲の雰囲気に近いアレンジも特徴的だ。

ナタリア・ラフォルカデは前作に続き、今作での収益を2017年にメキシコを襲った大地震で甚大な被害を受けたソン・ハローチョ文化センター再建の一助とするとのこと。この素敵な音楽作品は、そんな彼女の母国の伝統文化を愛する気持ちの結晶でもある。

メキシコを代表するシンガーソングライター

メキシコを代表するシンガーソングライターであるナタリア・ラフォルカデ。1984年生まれの彼女は芸術的に恵まれた家庭で育ち、幼少時から子供向け音楽教育法”Macarsi Method”を考案した母親からその実践を受けていた。
2002年のデビューアルバム『Natalia Lafourcade』はそのポップで天真爛漫な彼女のイメージとともに世界的に大ヒットし、日本でもソニー・ミュージックからあまりに酷く能天気なキャッチコピーとともに売り出された。

当初は前述のようにダンス・ミュージックやヒップホップ、ポップロックを軸としたサウンドだったが、メキシコの様々なアーティストと共演を重ねるうちに次第にルーツ・ミュージックにも傾倒し、タイニー・デスク・コンサートなどでも音楽家としての成熟を見せていく。

その活動の中でこれまでにラテングラミー賞など多くのアチーブメントを得ており、2017年にはディズニー/ピクサー映画『Coco(邦題:リメンバー・ミー)』の主題歌にも抜擢された。

ラテン圏のスター、ルベン・ブラデス(Rubén Blades)との共演曲(10)「Tú Sí Sabes Quererme」

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