トルコの現代ジャズをリードするチャグリ・セルテル、コロナ禍の小品集

Çağrı Sertel - Burada Buysa Budur

トルコの鍵盤奏者チャグリ・セルテル、コロナ禍でリリースした小品集

トルコの現代ジャズを代表する鍵盤奏者チャグリ・セルテル(Çağrı Sertel)の新譜『Burada Buysa Budur』は、打ち込みリズムと鍵盤での即興を中心とした良質なハイブリッド・ジャズに仕上がっている。

アルバムには8曲が収録されているが、前半3曲がそれぞれ3分程度あるのに対し、以降は1分程度の小品ばかりで全体でも15分ほどで終わってしまうが、どの曲も洒落たコード進行とリズム、ピアノの即興のいずれも心地よく、彼の類稀なセンスが垣間見える作品となっている。

おそらくアルバムの大部分は自身のDAWで完結されたものだろう。
新型コロナ禍はトルコにも甚大な被害をもたらし、ピーク時には1日に6万人以上の新規感染者を記録している。その後にはロックダウン(都市封鎖)も実施された。チャグリ・セルテルも世界中のアーティスト同様に、そんな中で自身の音楽に向き合う時間ができ、こうした時間の記録として本作をリリースしたのだ。
アルバムタイトルの“Burada Buysa Budur”はトルコ語だが、英語に翻訳すると“Here If This Is This”のようになるらしい。なんとも思考の迷路に迷い込んだような美しいタイトルだと思う。

(1)「Ayka」

チャグリ・セルテルは1983年生まれのイスタンブールを拠点に活動する鍵盤奏者/作曲家/プロデューサー。
12歳からピアノをはじめ、エレクトロニクスやロック、さらには中東音楽のエッセンスを取り入れたアグレッシヴなスタイルを武器に2010年にアルバム『Newborn』でデビュー、2017年に2nd『Instant』をリリース。

近年は自身のソロやバンド、他アーティストのサポートなど複数のプロジェクトを並行し精力的に活動を行なっている。

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