トルコの若手ピアニスト注目株、バトゥライ・ヤルキン
トルコのピアニスト/作曲家、バトゥライ・ヤルキン(Baturay Yarkın)の2018年作『Su』は、東欧〜中東的抒情あり、超絶技巧あり、スウィングありの良盤だ。独自のジャズ文化を築き、活況を極めるトルコのジャズシーンの中でも注目すべき存在なのではないだろうか。
曲中で様々な表情を見せる現代的なジャズ(1)「Istanbul」では、ピアノトリオの演奏に加えゲストに姉で中東の伝統楽器ケマンチェ奏者のナーメ・ヤルキン(Nağme Yarkın)も演奏に参加。西洋のヴァイオリンの源流となった擦弦楽器の音は現代的なジャズのサウンドの中で異質になるどころか、どの時代の音でもない不思議な時空の歪みを引き起こすようだ。
(4)「Rising Breeze」はトルコらしい9拍子で流れるようなピアノが印象的な導入部から、中間部ではスウィングするインタープレイへ。ドラムスとベースのサポートも完璧で、本作のハイライトの1曲となっている。
(8)「Üsküdar’a Gider Iken」では再びケマンチェが登場。作り込まれた構成の楽曲自体も素晴らしいが、編成や即興でもさりげなく個性を主張できるところが素晴らしい。
まだほとんど世界的な紹介がされていないピアニストだが、音楽性も技術も、そして独自性も最高峰のレベルにあるアーティストのように思う。ぜひアルバム一枚を通して大音量で聴き、浸ってもらいたい作品だ。
音楽家の家系に生まれ育ったバトゥライ・ヤルキン
バトゥライ・ヤルキンは1991年にトルコのイスタンブールで音楽家の一族に生まれた。彼に最初にピアノを教えたのも音楽家の両親で、彼は早くからピアニストとしての才能を開花させた。
6歳でイスタンブール大学州立音楽院のピアノコンクールで1位を獲得し、1998年から2010年までこの教育機関で音楽やピアノを学んでいる。
その後大学ではトルコ音楽、ジャズ、そしてアルゼンチンタンゴを研究。卒業後は演奏活動の傍ら教鞭もとり、バークリー音楽大学でトルコ音楽の講義を行ったこともあるそうだ。
実姉でケマンチェ奏者のナーメ・ヤルキン(Nağme Yarkın, 1985年生まれ)とは2016年からデュオ活動を開始し、ヤルキン・デュオ(Yarkın Duo)名義で何枚かの作品をリリースしている。
2021年にはソロピアノでの新譜『Hope』をリリースした。
Baturay Yarkın – Piano
Enver Muhamed – Bass
Burak Cihangirli – Drums
Guests :
Nağme Yarkın – kemanche (1, 8)
Sinan Şeşen – trumpet (5)