巨匠チャーリー・パーカー生誕100周年を記念するビッグバンド作
ドイツの名門ビッグバンド、SWR Big Band がスウェーデンのサックス/フルート奏者マグヌス・リングレン(Magnus Lindgren)を主役のソリストに、そしてアレンジャー/ピアニストとしてジョン・ビーズリー(John Beasley)を迎え、モダンジャズの巨匠チャーリー・パーカー(Charlie Parker, a.k.a. “Bird”)が作曲・愛演した名曲群を録音した新作『Bird Lives』。
緻密でいながら随所に遊び心が感じられ、様々な名曲のメロディーが散りばめられた現代的でカラフルなアレンジも楽しく、ビッグバンドの力強い演奏が気持ちを高揚させてくれる。ゲストもクリス・ポッター(Chris Potter, ts)、ジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano, ts)、チャールズ・マクファーソン(Charles McPherson, as)、ミゲル・ゼノン(Miguel Zenon, as)といった新旧の名手たちが次々に顔を出す様は圧巻の一言だ。
演奏はレイ・ノブル(Ray Noble)が作曲したジャズスタンダード「Cherokee」と、その曲のコード進行を元にチャーリー・パーカーが作曲した「Koko」をメドレーする(1)「Cherokee – Koko」からハイスロットル。常に緊迫感のあるビバップの高速4ビートに現代的なストリングスのアレンジも絡む面白い仕上がりになっており、フランス出身の歌手カミーユ・ベルトー(Camille Bertault)のスキャットも凄まじい。
この曲には歴史的なエピソードがある。レコード会社のプロデューサーは「Cherokee」原曲の著作権料を払いたくなかったため、チェロキーを録音しようと演奏を始めたチャーリー・パーカーらを途中で止め、同じコード進行上でアドリブで「Koko」が生まれたという(そのプロデューサーが演奏途中で口笛を吹いて演奏を中断させる当時の様子はYouTubeにもアップされている)。
ガーシュウィン作の(2)「Summertime」や、チャーリー・パーカー作(本当はマイルス・デイヴィスが作ったという噂も…)の(6)「Donna Lee」も驚くほどモダンなアレンジ。これを機にチャーリー・パーカーが残した大いなる遺産にも今一度向き合い直してみたい、そんなことも思わせてくれる素晴らしい作品だ。
このプロジェクトは元々は2020年の夏にチャーリー・パーカー(1920年生まれ)の生誕100周年を祝う大規模なコンサートで初演される予定だったが、感染症の流行のため実現しなかった。ビッグバンドのメンバーらはあらためて11月に集い、スタジオで本作を収録した。
マグヌス・リングレン、ジョン・ビーズリー略歴
テナーサックス、フルート、音楽監督を務めるマグヌス・リングレンは1974年スウェーデン生まれ。
若くしてハービー・ハンコックと共演するなどジャズを中心に幅広く活躍し、2001年にはスウェーデンの最高のジャズミュージシャンに選出された。
13歳の頃にサックスを始めたときから、他の多くのサックス奏者と同様にチャーリー・パーカーは彼にとってのヒーローだった。ジョン・ビーズリーと共同でアレンジを行った今作にはそんな喜びも溢れているように感じる。
鍵盤奏者/作編曲家のジョン・ビーズリーは1960年米国生まれで、ジャズ、映画音楽などで知られる。セロニアス・モンクの音楽をオーケストラ・アレンジしたプロジェクト『MONK’estra』ではグラミー賞にもノミネートされている。
SWR Big Band & Strings
co-arranged by Magnus Lindgren & John Beasley
Magnus Lindgren – music director, flute & tenor sax
John Beasley – piano & keys
Guests :
Chris Potter – tenor sax
Joe Lovano – tenor sax
Miguel Zenon – alto sax
Tia Fuller – alto sax
Charles McPherson – alto sax
Camille Bertault – vocal
Pedrito Martinez – percussion
Munyungo Jackson – percussion