トロンボーン奏者ハファエル・ホーシャによる現代的ラージアンサンブル
様々なバンドで活躍するブラジルの気鋭ジャズ・トロンボーン奏者/作編曲家ハファエル・ホーシャ(Rafael Rocha)の新譜『Rafael Rocha』は2021年の作品で聴き逃し厳禁の一枚だ。1月にリリースされ、あまり話題にあがらなかったと思うがとても斬新で濃密な現代的ラージアンサンブルとなっており、同じく前衛的なトロンボーンで人気のアントニオ・ネヴィス(Antônio Neves)の作品に比肩するほど聴き応えたっぷり。
(1)「Vento Bravo」を再生すれば彼の並外れた才能がすぐに分かる。エドゥ・ロボとパウロ・セザール・ピニェイロが共作し、A.C.ジョビンも歌ったこの曲だが、原曲の雰囲気を残しつつ伝統的なジャズ・ビッグバンドの質感と現代的な音作りやアレンジセンスが同居した、守りすぎず攻めすぎず、狂気につま先を踏み入れつつもギリギリ正気を保っているような絶妙なバランス感覚が心地よく、何度も繰り返し聴いてしまう。
(2)「Maracatu no Bambu」は名盤『GESTO』(2016年)で知られるベルナルド・ハモス(Bernardo Ramos)の曲で、これもまたマラカトゥを軸に展開するリズムの変化がかなり面白い。
ブラジリアン・ジャズ史上随一の巨匠モアシル・サントス(Moacir Santos)作曲の(5)「Coisa No. 2」も驚くほど斬新なアレンジが施され鮮やかに現代に蘇る。
他にもハファエル・ホーシャのオリジナルで祝祭感溢れる(8)「Outros Carnavais」などのほか、ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタのカヴァーも収録。どの曲もアレンジが凝っており、クラシックもジャズも民俗音楽も平等に溶け込んだブラジル音楽の土壌の豊かさをあらためて窺い知ることができる。
Rafael Rocha – trombones
Eduardo Farias – piano
Rafael Castilhol – piano
André Vasconcellos – bass
Bruno Rejan – bass
Arthur De Palla – bass
Hugo Maciel – bass
Giovani Malini – guitar
Wanderson Lopez – guitar
Renato Rocha – drums
Felipe Alves – drums
Dada Costa – percussion
Edu Szajnbrum – percussion