シカゴの気鋭アーティスト Ben LaMar Gay、圧倒的な存在感を示したソロ新譜
Bottle Treeの一員で、シカゴのジャズシーンでも突出した存在感を示すコルネット奏者/シンガー/作曲家ベン・ラマー・ゲイ(Ben LaMar Gay)のソロ新譜『Open Arms to Open Us』は、世界中の音楽ファンに彼のその強烈に個性的な音楽を知らしめるための強力な武器となるだろう。
ジャズ、ヒップホップ、ラテン、サンバなどが混淆した珠玉の16曲は、現代版『Bitches Brew』との呼び声も。伝統の継承と実験の精神という両面性が、秩序と混沌の間の恍惚感を生み出し、圧倒的な力で空間を飲み込む。
ベン・ラマー・ゲイという名前を調べるとコルネット奏者という肩書きがまず最初に挙げられているが、本作ではコルネットの演奏は抑制され、むしろマルチ奏者としてプロデューサー的な視点から作品全体を見渡し自身の世界観をパーフェクトに再現することに心血を注いでいるように感じられる。曲によって実にさまざまな要素がパズルのように組み立てられているが、無駄なものは一切なく、芸術家としての自身のすべてを露出し表現しきっているように思える。そしてもちろん、そういった魂の込められた作品はリスナー側にとっても比類なき体験をもたらすものなのだ。
このアルバムは、シカゴの前衛的な女性デュオOhmmeをゲストに迎えた(1)「Sometimes I Forget How Summer Looks on You」から、(5)「Mestre Candeia’s Denim Hat」へのアーティスティックに流れるような前半部分だけで早くも傑作と確信できる。
アルバム中盤ではより深く、深く世界観を掘り下げていく。
ドロシー・ムニアネザ(Dorothee Munyaneza)がルワンダ語で歌う(8)「Nyuzura」、主にナイジェリアで話されるイボ語のアルファベットをオニー・オズズ(Onye Ozuzu)とともに読み上げる(10)「Lean Back. Try Igbo」、アヤナ・ウッズ(Ayanna Woods)と共演する(12)「Touch.Don’t Scroll」などはどれも示唆的で面白い。
アルバム終盤、(13)「I Once Carried a Blossom」からは雨音が聴こえる。ベン・ラマー・ゲイはブラジルで暮らしていたこともあるそうで、(15)「S’phisticated Lady」ではリラックスしたパンデイロの演奏も聴かせてくれる。
アルバム一枚を通じて2時間半の映画のような充実感のある、とてつもなく完成度の高い作品だ。
Ben LaMar Gay – cornet, voice, organ, balafon, synths, temple blocks, programming, manipulations, percussion, cítara, bass synth, triangle, pandeiro, beatbox, kick drum, things
Tommaso Moretti – drums, xylophone, percussion, thangs
Macie Stewart – voice
Sima Cunningham – voice
Matthew Davis – tuba, trombone
Angela, Leia, Mina – a mother raises her daughters up to the mic (ooh Ahh AHH Ooh), voices
Johanna Brock – violin, viola, light
Tomeka Reid – cello, voice, luz
Rob Frye – flute, percussion, ears, tings and tungs
Ayanna Woods – voice, electric bass, light, ¡FreshNuss!
Adam Zanolini – soprano saxophone, oboe and swang
Xoco, Hannah, Francesca, Angela, Adam, Benjamin – Love Choir
Dorothée Munyaneza – voice
Onye Ozuzu – voice, Igbo alphabet
Rain – pouring
A.Martinez – poem
Gira Dahnee – Florida version
Angel Bat Dawid – Louisville recollections
Leia, Angela, Xoco, Alyssa, Mina, Benjamin – facts