欧州で注目浴びるヤキル・アルビブ、自身のルーツを掘り下げた中東ジャズ新譜

Yakir Arbib - Three Colors

ヤキル・アルビブ、自身のルーツを掘り下げた新譜『Three Colors』

イスラエル出身のピアニスト、ヤキル・アルビブ(Yakir Arbib)の4作目となる新譜『Three Colors』は、ジャズスタンダードや西洋クラシック音楽の意欲的な新解釈を軸としてきたこれまでの作品と比較すると、より自身のルーツとジャズとの関わりを掘り下げた所謂“イスラエルジャズ”の作品となっている。

ピアノトリオのメンバーにはこれまでの作品でも共演してきたイタリアのドラマー、ロベルト・ジャキント(Roberto Giaquinto)と、カナダ出身で幅広く国際的な活躍をするクリス・ジェニングス(Chris Jennings)を迎えている。ジョン・フレデリック・クーツの(1)「You Go To My Head」とジョン・コルトレーンの(9)「Moments Notice」を除き全曲がヤキル・アルビブの作曲で、欧州的な叙情性とユダヤルーツの甘美なフレージングが絶妙なバランスで融合。さらにカヴァー曲であっても中東音楽のエッセンスがかなりの割合で塗されているため、原曲が好きな人でもなかなかそれとは気づかないかもしれない。

おすすめは耽美な(2)「Yellow Sonata」や(5)「Juan Villarroel」、中東音楽を大胆に取り入れた(3)「The Pink Kasbah」、10分半におよび曲中様々に変化を変化させる(8)「The Planet of Three Colors」など。
確かなテクニックと鉄壁のアンサンブルであらためてイスラエルジャズの豊かな土壌を感じられる秀作だ。

イスラエルジャズ色の強い(3)「The Pink Kasbah」

ヤキル・アルビブ 略歴

ピアニスト/作曲家のヤキル・アルビブは1989年エルサレム生まれ。4歳でピアノを始め、7歳でテルアビブの音楽院でクラシックピアノ、バロックフルート、トランペットなどを学んだ。その後テルマ・イェリン芸術高校からバークリー音楽大学というエリートコースを歩み、2008年にはマッシモ・ウルバニ国際コンペティションで受賞。19歳のときに『Portrait』でデビューし注目を集めた。2015年にはモントルー国際ピアノジャズコンクールで2位となり、審査員から「もっとも独創的なピアニスト」と評価されている。

2018年のソロピアノ作『Babylon』ではブラームス、バッハ、ストラヴィンスキー、バルトーク、シューベルト、パガニーニ、ショパンといったクラシック音楽をベースに創造的なアレンジ、即興を披露。少なくともバロック時代から音楽の重要な要素であったはずの即興の精神を通じ、楽譜に固執しがちな現代の“クラシック音楽”への疑問を投じた。

Yakir Arbib – piano
Roberto Giaquinto – drums
Chris Jennings – bass

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