シカゴの最先端ジャズを探求する3人によるプロジェクト「Artifacts」
フルート、チェロ、ドラムス/パーカッションという珍しい編成の米国シカゴのトリオ、アーティファクツ(Artifacts)の2ndアルバムとなる2021年新譜『…And then there’s this』は、ジャズの遺産を継承しつつ音楽の無限の可能性へチャレンジをしている。
前衛とも呼ばれる彼らだが音楽的な奇抜さはあまりなく、コード感を出しながら主に低音を支えるチェロの上で特殊奏法やエフェクトも交え自由にソロをとるフルート、シンプルなセットから様々なリズムを叩き出すドラムスでのアンサンブルは音楽的にも高度で、非常にドラマチックなジャズだ。
メンバーは様々な大学でジャズを教え、2001年にはアーティストとしてもアルバムデビューした女性フルート奏者ニコル・ミッチェル(Nicole Mitchell)、 Art Ensemble of Chicagoなどとの録音やニコル同様にジャズ教師として知られる女性チェロ奏者トメカ・リード(Tomeka Reid)、そして男性ドラマー、マイク・リード(Mike Reed)。3人はいずれもシカゴで1965年に設立されたクリエイティブミュージシャンの振興協会(AACM)に所属しており、2000年代初頭から様々なグループ等で度々共演を重ねてきた。Artifactsとしては2015年にセルフタイトルのアルバムをリリースしており、今作が2作目となる。
アルバムでは(1)「Pleasure Palace」から、フルートの鋭い発声奏法、チェロの強靭なピチカートといった素晴らしい演奏に圧倒される。(2)「Dedicated to Alvin Fielder」ではさらにフルートの特殊奏法が多用されており興味を惹かれる。
楽曲はほぼ3人のオリジナルだが、(7)「Soprano Song」はAACMの初代会長でもあるピアニスト/クラリネット奏者のムハル・リチャード・エイブラムス(Muhal Richard Abrams, 1930 – 2017)の作曲によるもの。
この作品は先進的な音楽の探求を続けるAACMへの敬意と、そしてその資産を次の世代の意欲的な音楽家たちに引き継いでいくための試みでもある。
Nicole Mitchell – flute, electronics, voice
Tomeka Reid – cello
Mike Reed – drums, percussion