日本語の歌も歌う、チュヴァシの伝統と未来を見つめるバンド「DIVA Ethno Future Sound」

DIVA Ethno Future Sound - Chuvash Stanzas & Songs

チュヴァシ共和国の伝統音楽にインスパイアされたバンド、DIVA Ethno Future Sound

ロシア連邦チュヴァシ共和国に根付く伝統音楽を軸に活動するバンド、DIVA Ethno Future Sound のデビュー作『Chuvash Stanzas & Songs』が素晴らしい。バンドはヴォーカル、ピアノ、ハープ、木管の4人編成で、シンプルな楽曲構成にゆったりとオーガニックなサウンドに心が安らぐ。ヴォーカルのナターリア・ヴァシレヴァ(Natalia Vasileva)の声の透明感も美しく、ときおり力強く高らかに歌う表現力も魅力的だ。

アルバムタイトルは“チュヴァシのスタンザ(定型詩)と歌”の意味で、チュヴァシ・スタンザは日本の俳句や短歌と同じように一定の音律に沿った伝統的な詩の表現方法。詩と歌を交互に繰り返す構成となっており、作曲はすべてピアニストのルスラン・ソロヴィエフ(Ruslan Soloviev)が担う。

(2)「Shyvĕ Yuhat」のMV。

(2)「Shyvĕ Yuhat」には日本語ヴァージョンがあったり、(6)「Ăçta Kayan Chĕkеç」にも日本語詞で歌われる「つばめさんどこへ向かう」と題された版があったりと日本文化への強い関心も伺わせる。
チュヴァシの伝統曲にインスパイアされた楽曲群は東欧〜中央アジアのフォークソングらしく素朴な温かみがあり、日本語で歌われるこれらの楽曲ではまだ見ぬ遠い故郷の歌のような不思議な感覚を覚えてしまう。

チュヴァシの伝統曲(2)「Shyvĕ Yuhat」の日本語詞ヴァージョン。アルバムではチュヴァシ語版が収録されている。

(10)「Sar Checheksem Çinche」にはモスクワを拠点に活動するロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trio(彼らは来日演奏経験もあり、2018年のアルバム『Urban Dreamer』では日本の童謡「赤とんぼ」を演奏している)が参加し、ナターリア・ヴァシレヴァのヴォーカルに寄り添った朴訥としたジャズを聴かせてくれる。

LRK Trioと共演した(10)「Sar Checheksem Çinche」

ラストの(12)「Shur Shӑpaler」はパーカッションも加わったアップテンポの祝祭感溢れる曲で、東洋的・中国的な旋律も興味深い。

チュヴァシの文化を広める、DIVA Ethno Future Sound

DIVA Ethno Future Soundはピアニスト/作曲家のルスラン・ソロヴェフを中心にモスクワとサンクトペテルブルクのミュージシャンによって2019年に結成された。チュヴァシ民族の音楽文化の普及を目指しロシア国内をはじめ、パリで開催されたユネスコ主催の国際写真展の開幕イベントにも出演するなど活躍の場を広げている。

(2)「Shyvĕ Yuhat」のライヴ演奏動画。チュヴァシの民族衣装も美しい。

DIVA Ethno Future Sound :
Natalia Vasileva (Наталья Васильева) – vocals
Diana Uspenskaya (Диана Успенская) – harp
Alexander Bruni (Александр Бруни) – saxophone, flute
Ruslan Soloviev (Руслан Соловьев) – piano

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