ドイツのジャズシーンを代表する二人が描く音の語らい…Sendecki & Spiegel『Solace』

Sendecki & Spiegel - Solace

Sendecki & Spiegel 注目のデュオ新作『Solace』

ポーランドを代表するピアニスト、ヴラディスラフ・センデツキ(Vladyslav Sendecki)と、Tingvall Trioで活躍するドイツのドラマー、ユルゲン・シュピーゲル(Jürgen Spiegel)のデュオによる第二作『Solace』。ドイツ周辺のジャズの“旗艦”と評される二人による今作では、オリジナルのほか、ピーター・ガブリエルの(7)「Don’t Give Up」のカヴァーも収録し、美しい余韻が心地よい端正な演奏を聴かせてくれる。

彼らがこれまで見せてきた音楽と同じように、西洋で歴史の歩みとともに培われてきた古典音楽の遺産と、ジャズという分野で確立されたその時々の感情をもとに瞬時に構築される即興の絶妙なる融合は、魅力的な絵画や詩を思わせる。ピアノとドラムスのみというアンサンブルとしては最小限のフォーマットだからこそ実現できる親密な感情の交換が共感を呼ぶアーティスティックな作品だ。

特にタイトル曲でもある(5)「Solace」(慰め)は、パンデミックの時代に人間同士の繋がりの普遍性について改めて考えさせられる素晴らしい演奏だ。

内省的な(9)「Letter To Myself」

プロフィール

ピアノのヴラディスラフ・センデツキ(Vladyslav Sendecki, ポーランド語:Władysław Sendecki)は1955年ポーランド・ゴアライス生まれ。元々はショパン音楽院などでクラシックのピアノを学んでいたが、のちにジャズに転向した。
1981年にスイスに移住し、国際的なキャリアを開始。サックス奏者のクラウス・ドルディンガー(Klaus Doldinger)率いるドイツのジャズ/フュージョン・バンド、Passportへの参加や、晩年のジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)が欧州ツアーの際にビレリ・ラグレーン(Biréli Lagrène)らとドイツで録音したアルバム『Stuttgart Aria』(1986年)にもクレジットされている。
NYの老舗コミュニティ誌『ビレッジボイス』(2018年に廃刊)は彼を“世界のジャズピアニストのトップ5のひとり”と評価した(残りの4人はハービー・ハンコック、キース・ジャレット、デューク・エリントン、そしてチック・コリア)が、寡作なためかあまり知られていないことも事実だ。

一方のドラマー、ユルゲン・シュピーゲル(Jürgen Spiegel)は1972年ドイツ・ブレーメン生まれ。十代後半から地元ブレーメンの音楽学校などでドラムを学び、のちにニューヨークのマンハッタン音楽学校にも留学。
ヨーロッパでもっとも革新的なピアノトリオのひとつとして知られるティングヴァル・トリオ(Tingvall Trio)のメンバーとして知られ、2000年代より数々の賞を受賞している。
これまでにカート・エリング(Kurt Elling)、ヤリ・カリシ(Yari Carissi)、ドミニク・ミラー(Dominic Miller)、NDRビッグバンド(NDR Big Band)、ネカ(Nneka)など多彩な音楽家たちと共演をしている。

Vladyslav Sendecki – piano
Jürgen Spiegel – drums, percussion

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