シリア出身・カーヌーンの名手マヤ・ユセフ、心の故郷への旅路に誘う2ndアルバム

Maya Youssef - Finding Home

“カーヌーンの女王”マヤ・ユセフ2nd『Finding Home』

伝統と革新性が同居するハイブリッドなアラビック・クロスオーヴァーの好盤、シリア出身のカーヌーン奏者マヤ・ユセフ(Maya Youssef)の新譜『Finding Home』。カーヌーンはアラブ地域で広く使われるチター属の伝統的な楽器で、その煌びやかな音色が魅力的だ。今作では78弦のカーヌーンに加えピアノ、打楽器、ストリングス、ヴォーカルなど最大11人編成のアンサンブルが楽しめる。彼女の音楽にはアラブ音楽だけでなくジャズ、西洋のクラシック、フラメンコなどのスタイルが混ざり、音階も音律も多様性に富む。西洋音楽の音楽理論に縛られない(4)「To an Earth Angel」などはその好例だ。

(3)「Samai of Trees」

マヤ・ユセフはシリアの首都ダマスカスに1984年に生まれた。父は作家/ジャーナリストのハッサン・M・ユセフ(Hassan M. Youssef)。7歳頃から音楽を学び始め、カーヌーンを始める前は主にヴァイオリンを習っていたという。12歳のとき、シリアの全国青年音楽コンクールで最優秀音楽家賞を受賞。その後ダマスカスの高等音楽演劇芸術研究所に通い、カーヌーンを専門として学位を取得。2003年にSyrian Female Oriental Band(SFOG)の創設メンバーとなった。

その後はドバイ、英国ロンドンと活動の拠点を移しながら音楽活動を継続。2017年に初のソロ作『Syrian Dreams』をリリースしたが、この創作のきっかけはシリア戦争による故郷の喪失だったという。

中東の中でも安全な街と言われ、経済も芸術も活況を呈していた故郷ダマスカスの喪失は彼女に大きな心の傷を残したが、やがて時が経つにつれ、彼女は自身の心の拠り所をダマスカスやシリアという小さな地域ではなく、“世界”や“人類”に自らの家を見出すようになった。
“カーヌーンの女王”とも呼ばれるマヤ・ユセフのこのアルバムは、世界中の人々を心の故郷への旅路へと優しく誘う。ここには 文化の違いを超えた、音楽の本質的な何かが潜んでいる。

Maya Youssef - Finding Home
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