5作目にして初のコラボレーション作品
南カリフォルニア大学在学中に結成された新世代ネオ・ソウルバンド、ムーンチャイルド(Moonchild)の最新作『Starfruit』が今年リリースされた。フロントマンであり紅一点のボーカル、アンバー・ナヴラン(Amber Navran)をはじめ、マックス・ブリック(Max Bryk)、アンドリス・マットソン(Andris Mattson)とメンバー全員がマルチプレイヤーであるムーンチャイルドの最新作は、心地よいメロウネスはそのままに、我々にまた新たな色を見せてくれる。
本作の始まりを告げる(1)「Tell Him」は、言わずと知れたダニー・ハサウェイ(Danny Hathaway)の娘、レイラ・ハサウェイ(Lalah Hathaway)とのコラボ曲。ノラ・ジョーンズのような透明感のあるアンバーのボーカルに絡み合う父譲りのソウルフルなレイラの歌声は、ムーンチャイルドが持つ「心地よい温度感」にプラス1度の熱量を与えてくれている。(4)「You Got One」も同じくソウル界のレジェンド、アイズレー・ブラザーズ(Isely Brothers)の血を引くアレックス・アイズレー(Alex Isely)をフィーチャー。大御所シンガーたちとの競演を張り合うことなく見事に調和し、ムーンチャイルドの楽曲として存在させていることは見事としか言えず、ムーンチャイルドの音作りの真髄を垣間見ることが出来る。
一方、本作はラッパーもまた数多く参加している。(6)「Need That」はイル・カミーユ(Ill Camille)を、(12)「Don’t Hurry Home」ではムム・フレッシュ(Mumu Fresh)をフィーチャー。
(10)「Love I Need」では、参加したラプソディ(Rapsody)が
I ain’t ever known real love like Mary J
メアリーJみたいなリアルラブなんて知らねえよ
とラップするように、90年代のメアリー・J・ブライジ(Mary J Blige)を思わせるヒップホップソウルが全編に流れる、今までのムーンチャイルドにはないナンバーだ。
その他、タンク・アンド・バンガス(Tank & the Bangas)が参加した(8)「Get By」ではムーンチャイルドの持つ浮遊感にタンクことタリオナ・ボール(Tarronia “Tank” Ball)のボーカルが乗っかり、アフロサウンドのようなまた別の気持ちよさが生まれているのも非常に興味深い。
様々なアーティストとのコラボによって甘みを増したムーンチャイルドの作品は、これから先も私たちの耳を喜ばせてくれることだろう。
プロフィール
米・カリフォルニア州ロサンゼルス出身のネオソウル・バンド。メンバーはアンバー・ナヴラン、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンの3名。南カリフォルニア大学のジャズ・スクールにて結成し、2012年に『ビー・フリー』でアルバム・デビュー。スティーヴィー・ワンダー、ジル・スコット、インディア.アリーらに影響を受けながら、ネオソウルを軸に新世代ジャスと接触し、独自のサウンドを構築。2015年の2作目『プリーズ・リワインド』が世界的評価を獲得。2017年に『ボイジャー』、2019年に『リトル・ゴースト』をリリース。 (Tower Record アーティストプロフィールより)