トニーニョ・フェハグッチ&ナイロール・プロヴェータ、円熟のデュオ作
アコーディオン奏者トニーニョ・フェハグッチ(Toninho Ferragutti)とクラリネット奏者ナイロール・プロヴェータ(Nailor Proveta)の二人はともに今日まで豊かなブラジル音楽の土壌を耕し続けてきた。80年代後半に広告のジングルの録音で初めて一緒に仕事をしたというサンパウロの名手二人はこの時からお互いがまるで旧知の仲であるかのように音出しができたことに驚いたという。ナイロール・プロヴェータの父親がアコーディオンを弾いていたことを話すと、トニーニョ・フェハグッチは自らの父親がクラリネットを演奏していたことを彼に打ち明けた。こうして二人はいつしかデュオ演奏の夢を抱くようになったが、それが2022年になってようやく『Bagualina』というアルバムとして結実した。
この作品には二人の未発表曲が合計10曲収録されている。軽やかなパッセージで掛け合う叙情的なワルツ(1)「Bagualina」から始まる緻密さと躍動感、美しさを兼ね備えた演奏の数々に心が踊らされる。熟練としか表現しようのない素晴らしいデュオは、ショーロ、ジャズ、クラシックなどのファンの心に刺さるだろう。
プロフィール
トニーニョ・フェハグッチ(Toninho Ferragutti)は1959年生まれ。これまでに10枚以上のリーダー作をリリース、サイドマンとしては50枚以上の作品に参加しており、ブラジルを代表するアコーディオン奏者として知られている。最初のソロアルバム『Sanfonemas』(2000年)はラテングラミー賞にノミネート。
ナイロール・プロヴェータ(Nailor “Proveta” Azevedo)は1961年生まれ。これまでの共演者はジョイス(Joyce)、シモーネ(Simone)、エルザ・ソアレス(Elza Soares)などなど枚挙に遑がなく、近年は伝説的ギタリスト/作曲家ギンガ(Guinga)に帯同し来日公演を行ったことも記憶に新しい。
Toninho Ferragutti – accordion
Nailor Proveta – clarinet, alto saxophone