ギラッド・ヘクセルマンが“さらなる混沌”で魅せたジャズギター最前線

Gilad Hekselman - Further Chaos

絶賛された前作『Ask for Chaos』の続編

ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)が2つの異なるトリオ編成「Zuper Octave」「gHex Trio」を率いて2019年に発表したEP『Further Chaos(さらなる混沌)』は、絶賛された2018年作アルバム『Ask for Chaos』の続編的作品だ。

メンバーは前作に引き続きギラッド・ヘクセルマン(g)他、「Zuper Octave」がアーロン・パークス(Aaron Parks, p, key) 、クッシュ・アバディ(Kush Abadey, ds)。
「gHex Trio」がリック・ロザート(Rick Rosato, b)、ジョナサン・ピンソン(Jonathan Pinson, ds)。
数曲でダイナ・ステフェンズ(Dayna Stephens, sax)がゲスト参加している。

サウンドもコンテンポラリー・ジャズギターの傑作と評価された前作の延長線上にあり、テクノやドラムンベースの影響も伺える実験的路線の「Zuper Octave」と、独自のコンテンポラリージャズを追求する「gHex Trio」で毛色の異なる世界観がシームレスに交錯する。

アルバム『Further Chaos』収録の(3)「The Hunting」。
Dayna Stephens(EWI)のソロが圧巻!
Kush Abadey(ds)のプレイも素晴らしい。

「Zuper Octave」編成で演奏される(1)「Seoul Crushing」はタイトルからしても前作「Tokyo Cookie」の対比だろう。
「Tokyo Cookie」もアバンギャルドなセンスが光るギラッド・ヘクセルマンらしい現代ジャズギターのひとつの到達点を思わせる楽曲だったが、この「Seoul Crushing」も吹っ切れていてヤバい。不穏な和音をひたすら鳴らすアーロン・パークス。ギラッドのギターソロも、ダイナ・ステフェンズのウィンドシンセのソロも、一体普段何を食べていたらこの音楽のアイディアが出てくるんだろうかと不思議に思う恐るべき完成度である。
(3)「Hunting」においても、クッシュ・アバディが叩き出す複雑なリズムの上で、自由に浮遊するギターソロが気持ちよく響く。色彩豊かな楽曲アレンジも、空間的で度の過ぎないエフェクト処理もセンス抜群。

「gHex Trio」で演奏される(5)「Teen Town」はジャコ・パストリアス作曲の往年の名フュージョンバンドWeather Reportの名曲。今聴いてもかっこいい原曲のテーマを崩すことなく、ギラッド・ヘクセルマン流のコンテンポラリージャズとして蘇らせている。
同編成の(2)「Toe Stepping Waltz」でも作曲、アレンジ、アドリブ、音色作りなどあらゆる面で突出した才能を惜しげなく見せてくれる。

Gilad Hekselman - Further Chaos
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