クレタ島の歴史を辿る多国籍プロジェクト。ギリシャのヴァイオリン奏者マリア・マノウサキ新譜

Maria Manousaki - Hidden Trails

ギリシャのヴァイオリン奏者マリア・マノウサキ『Hidden Trails』

ヨハネスブルグ生まれ、ギリシャ・クレタ島出身のヴァイオリニスト/作曲家マリア・マノウサキ(Maria Manousaki)の新作『Hidden Trails』は、現代ジャズのひとつの太い亜流の主役を担う多国籍のメンバーを集めた必聴盤だ。彼女の2015年作『Sole Voyage』もシャイ・マエストロやペトロス・クランパニスなど素晴らしい演奏家で構成されていたが、今作の面子も相当に興味を惹かれる。

まず、プロデューサーや楽曲のアレンジメントには過去作に引き続き同郷ギリシャのペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)が深く関与(ただしベースは弾いていない)。
ピアノにイスラエルの若手の俊才ガイ・ミントゥス(Guy Mintus)、ドラムスにオーストラリア生まれ・トルコ出身のエンギン・ギュナイドゥン(Engin Gunaydin)、エレクトリック・ベースにアメリカ合衆国のパナヨティス・アンドレウ(Panayiotis Andreou)というコアメンバーを揃え、さらにはアルメニアにルーツを持つシリア生まれの伝説的ウード奏者ハイグ・ヤズジアン(Haig Yazdjian)、木管にアルメニアのティグラン・サルキシャン(Tigran Sargsyan)、そしてクレタン・リラにギリシャのザクアリアス・スピリダキス(Zacharias Spyridakis)が数曲で参加している。

マリア・マノウサキもヴァイオリンというよりはフィドル的な表現を好み、時折微分音も奏でるなど他ではあまり聴くことのできないルーツミュージックを基調としたヴァイオリン・ジャズを奏でる。全曲がマリア・マノウサキのオリジナルで、その演奏はクレタ島の伝統音楽のイメージを想起させるが、同時に中東や東欧の音楽的な要素が歴史的にクレタ島に与えてきた様々な影響を生々しく描き出す。

(1)「Hidden Trails」
本作収録ヴァージョンとは異なる編成での演奏。

Maria Manousaki – violin
Guy Mintus – piano
Panayiotis Andreou – bass
Engin Gunaydin – drums

Guests :
Haig Yazdjian – oud
Tigran Sargsyan – woodwind
Zacharias Spyridakis – Cretan lyra

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