イスラエル出身ヨタム・ベン=オール、初のSSW作品
ジャズ・ハーモニカの新鋭として知られるイスラエル出身ヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)の新譜『Deliberations』は、驚いたことにハーモニカ奏者というよりもシンガーソングライターとしての才能を世の中に知らしめる作品だった。
全曲がヨタム・ベン=オール作曲。気怠げな(1)「Hitayafti」ではハーモニカやヴォーカルのほかにピアノやパーカッションも担当し音楽家としての総合的な力を示し、良質なポップスとしても機能する6/8拍子の(2)「MiliM」でのさりげない音楽的工夫で本作が素晴らしい作品だと確信させる。
ブラジル音楽、とりわけジスモンチやパスコアールの影響が強く出た(3)「Duet」には女性ヴォーカリストのダナ・ヘルズ(Dana Herz)が美声を聴かせ、ベネズエラ出身のピアニストガブリエル・チャカルヒ(Gabriel Chakarji)のパーフェクトな伴奏が印象的な(4)「OlaMuzar」、ピアノのみが寄り添う静謐な(5)「Shabbat」へと、短くも濃厚でアーティスティックな時間を通過させていく。
これらのヘブライ語の楽曲群はガブリエル・チャカルヒらと録音し同時期にリリースされたインストのEP『Endless』とは全く毛色が異なるが、これからのジャズの進化の一翼を担うであろうアーティストのひとつのターニングポイントとなりそうだ。
Yotam Ben Or – vocal, harmonica, piano (1, 3), percussion (1, 2), additional keyboards (2, 4)
Alon Near – bass
Noam Israeli – drums (2, 3, 4)
Gabriel Chakarji – keyboards (2, 3, 4)
Victor Pablo – percussion (1)
Jonathan Peled – trombone (1)
Dana Herz – vocal (2, 3)
Yonatan Daskal – synth (2)
Tal Mashiach – guitar (3)
Rogerio Boccato – percussion (3)
Emanuel Keller – cello (4)
Friends from Nataf – chorus (3, 4)