ドイツのSSWオリヴィア・トルンマー新譜『For You』
ドイツ出身のピアニスト/ヴォーカリスト、オリヴィア・トルンマー(Olivia Trummer)の2022年新譜『For You』。冒頭、ウーリッツァーピアノがレトロお洒落な風情の(1)「Thirsty in the Bathtub」から傑作を確信する素晴らしい一枚だ。
ピアノトリオを中心に、数曲でCaipiバンドで共演したギタリストのカート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)、イタリアを代表するトランペッターのファブリツィオ・ボッソ(Fabrizio Bosso)もゲスト参加。(2)「Ever Changing Heart」では主役を奪う勢いのカート・ローゼンウィンケルのギターソロ、(3)「One Way Streets」ではヴォーカルに寄り添いつつも時に感情の昂りを咆哮で表現するファブリツィオ・ボッソの熟練のトランペットを楽しむことができる。
1957年生まれのベテラン・ベーシストのロザリオ・ボナコルソ(Rosario Bonaccorso)は堅実に低音を固めつつ、ソロではよく歌う。ドラマーのニコラ・アンジェルッチ(Nicola Angelucci)も地味ながら随所で創造力の光るプレイを見せ、主役のオリヴィア・トルンマーを支えている。
全体的な完成度は相当に高い。オリヴィア・トルンマーという才能溢れる音楽家の真価が発揮された、絶賛に値する作品だ。
Olivia Trummer 略歴
オリヴィア・トルンマーは1985年ドイツ南西部のシュトゥットガルト生まれ。4歳でクラシックピアノを始め、すぐに即興や作曲にも情熱を注ぐようになった。シュトゥットガルトの音楽大学でジャズピアノとクラシックピアノの両方を修了し、その後ニューヨーク市のマンハッタン音楽学校で修士号を取得している。
当初は作曲家兼ピアニストだったが、20代の頃にピアノを弾きながら歌うようになり、完全なインストゥルメンタルである初期の2枚のアルバムを除く全ての作品で彼女の歌を聴くことができる。出生作は『Poesiealbum』(2011年)。カート・ローゼンウィンケルが10年温めたブラジル音楽インスパイアドのプロジェクト、Caipiでもシンガー兼鍵盤奏者として活躍している。
Olivia Trummer – vocals, piano, Wurlitzer
Rosario Bonaccorso – double Bass
Nicola Angelucci – drums
Guests :
Fabrizio Bosso – trumpet
Kurt Rosenwinkel – guitar, baritone guitar