TikTok世代による新たなHipHop。Jack Harlowが蘇らせた「Glamorous」

受け継がれる白人ラッパーのバトン

“I’m just a guest inside the house of a culture that ain’t mine, and I’m just blessed to be around.”

「自分のものではない文化の家の中にいる客の感覚。周りには認めてもらってるけどね。」

白人ラッパーは、ヒップホップをメインストリームへ導き出してきたという意味では無視することのできない存在である。80年代のヴァニラ・アイス(Vanilla Ice)に始まり、90年代にはハウス・オブ・ペイン(House of Pain)エヴァーラスト(Everlast)などがそれに当たるだろうか。00年代にはエミネム(Eminem)が登場し、10年代はドレイク(Drake)を筆頭に、ポスト・マローン(Post Malone)マックルモア(Macklemore)といった多くの白人ラッパーを輩出した年代となった。ただ、これだけポピュラーなカルチャーとなっても未だ黒人の音楽フォーマットという意識が根強いというのが、上述の歌詞が示すヒップホップの現在地であろう。

ヒップホップ界にエルヴィスは現れるのか?
シュガーヒル・ギャング(Sugarhill Gang)の「Rapper’s Delight」から40年。未だ答えの出ない問いに名乗りを上げたのが、ジャック・ハーロウ(Jack Harlow)である。

ヒップホップを取り巻くプラットフォームの変化

ジャック・ハーロウはTikTokから火がついた、まさに新世代ラッパーだ。
20年作「What’s Poppin」がTikTokで幅広くシェアされることにより、YouTubeのMV再生回数は1億回を超え、ついにはグラミー賞の最優秀ラップパフォーマンスにもノミネートされている。

「What’s Poppin」の別ver。Da babyやLil Wayneなどのマイクリレーが秀逸。

しかし、ヒップホップという音楽の主戦場はどこなのだろうか?
もちろん時代によって、そのプラットフォームは変わってくるが、コロナ禍はヒップホップという音楽の在り方を大きく変えたと言っていいだろう。
この2年強においてクラブ文化は影を潜め、サブスクリプションサービスによって、音楽は個人の端末がメインの主戦場となったと言っていいのではないだろうか。そしてそれはヒップホップも例外ではない。

多くの人を踊らせる楽曲から、個人の心を踊らせる楽曲へ。クラブミュージックと呼ばれたヒップホップの音楽性は、よりメッセージ性の強いポリティカルなもの、またはパーソナルなものといった両極端に振れることとなる。(過去、記事で取り上げたケンドリック・ラマーカミラ・カベロもまた、近年はパーソナルな作品を残している。)

HipHop新世代が定義する20年代のヒップホップ

しかし、ジャック・ハーロウが今年リリースした最新作『Come Home The Kids Miss You』はどうだろうか。HipHop is Back!と言わんばかりの挑発的でバウンシーなビートは、20年代のヒップホップを再定義するような野心あふれる作品に仕上がっている。

中毒性のあるビートが特徴のM2「Young Harleezy」は、スヌープドッグ(Snoop Dogg)の客演参加も含めファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)プロデュースのスヌープ曲「Drop It Like It Hot」を思わせる。実際、M7「Movie Star」でのファレル参加をはじめ、ドレイク、ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)リル・ウェイン(Lil Wayne)など、超大物達がこぞって本作品に参加しており、これもまたジャック・ハーロウへの業界の期待の表れといえる。

そして本作品で特筆したいのが、再びTikTokで注目を集めているM4「First Class」である。
2006年のファーギー(Fergie)「Glamorous」をサンプリングした本楽曲。TikTok世代には新たなサウンドとして受け入れられながらも、00年代回帰とも言える「あの頃」のクラブサウンドをパーソナルなプラットフォームに蘇らせたセンスは見事としかいいようがない。

その他、デュア・リパ(Dua Lipa)をはじめ、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)までいじり倒すM5「Dua Lipa」や、西海岸サウンドを感じるM6「Side Piece」、レイドバックしたサウンドが心地いいM8「Lil Secret」M15「State Fair」などバラエティに富んだ全15曲。

これを聴いてあなたは「新しい」と思うだろうか?「懐かしい」と思うだろうか?是非、その耳で確かめてほしい。

プロフィール

斬新なスタイルと型破りなサウンド、反抗的な勢いで、音楽界に大歓迎された、ジャック・ハーロウ。
彼は、幼い頃から音楽を身近に感じ、音楽に対する愛情が冷めることは決してなかった。2016年、彼は初のミックステープ『18(読み:エイティーン)』をリリースし収録曲の「アイスクリーム」が大ヒット、瞬く間に注目を集めた。

グラミー賞に3回ノミネート、2枚のシングルで1位を獲得し、12枚のRIAAプラチナ認定を受け、現在までに50億回以上のストリーミング再生回数を誇る、米国誌で「明日のヒットメーカー」と称された音楽界で最も偉大な新星の一人である。
Jackは2020年12月に絶賛されたRIAAプラチナ認定デビュー・アルバム『THATS WHAT THEY ALL SAY』をリリースし、全米チャートのホット100で2位を獲得。収録曲「WHATS POPPIN」はプラチナ認定を7個取得するヒットとなり、グラミー賞「Best Rap Performance」で初ノミネート、その他多くの賞にノミネートされている。

Jackは現在、待望のセカンド・アルバム『COME HOME THE KIDS MISS YOU』でさらなる高みに到達しようとしている。このアルバムからの先行シングルの一つ「First Class」は早くも全米チャートのホット100で華々しくデビューし、自身初のソロ1位シングルとなり、2022年最大のストリーミング週数を獲得している。 (warner music japan 公式プロフィールより)

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