ヒカルド・バセラール新譜『Congênito』
ブラジルのピアニスト/マルチ奏者/作編曲家ヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)の新作『Congênito』は、MPBを代表する名曲群をヒカルド・バセラール自身による編曲、楽器演奏、歌、プロデュースで仕上げた作品だ。
収録曲はレニーニ(Lenine)の(1)「O Último Pôr do Sol」、イヴァン・リンス(Ivan Lins)の(2)「She Walks This Earth」、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)の(6)「Estrela」、ドリ・カイミ(Dori Caymmi)の(10)「Estrela da Terra」などブラジル音楽の愛好家であれば耳にしたことがある曲が多い。
レニーニの初期の名盤『Olho de Peixe』に収録されていた(1)「O Último Pôr do Sol(最後の日没)」について、ヒカルド・バセラールは次のようにコメントしている。
夢の中にこの曲のヴォーカルアレンジが出てきて、目が覚めときにも頭の中に残っていたんだ。ハープを彷彿とさせる中世起源のダルシマーなどのエキゾチックな楽器を、ピアノ、ストリングス、フルートと組み合わせた。アラブ音楽、ブラジル北東部の音楽、そしてサンバ・ヂ・ホーダの影響も受けている。ビリンバウを買ってきて数日間練習し、録音した。
私は前からこの曲が示唆するイメージが好きだった。今回私は、サウンドを探求し、この曲をブラジル文化の幾つものエッセンスで溢れる音の饗宴に仕上げたんだ。
アルバムのラストを飾るのはシコ・サイエンス&ナサォン・ズンビ(Chico Science & Nação Zumbi)によってカヴァーされ大ヒットした(12)「Maracatu Atômico」。原曲はジョルジ・マウチネル(Jorge Mautner)とネルソン・ジャコビーナ(Nélson Jacobina)によって作られ1974年にリリースされた曲だが、リリースから半世紀近く経った今でも絶大な訴求力を失っていないことをヒカルド・バセラールは証明している。
Ricardo Bacelar 略歴
ヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)は1967年ブラジル・セアラ州生まれのピアニスト/作曲家/プロデューサー。ブラジルの80〜90年代を代表するリオ発のロックバンド、ハノイ・ハノイ(Hanói-Hanói)の鍵盤奏者として長年活躍し、2001年にクラシック音楽の影響も色濃く現れた初のソロアルバム『In Natura』を発表。これまでにソロで5枚ほどのアルバムをリリースしている。
彼は最新技術で設計されたスタジオを作り、新たに「Jasmin Music」レーベルを創立。2021年に同レーベルより若手ギタリストのカイナン・カヴァルカンチ(Cainã Cavalcante)との初の共作『Paracosmo』をリリースしている。