ブラジルのベテラン鍵盤奏者ヒカルド・バセラール、ブラジル〜ジャズを繋ぐライヴ盤

Ricardo Bacelar - Ao Vivo no Rio

ヒカルド・バセラール、新譜はブルーノート・リオでのライヴ盤

ブラジルの作編曲家/鍵盤奏者のヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)のライヴ・アルバム『Ao Vivo no Rio』(2020年)は、ブルースやジャズ、そしてブラジルのポピュラー音楽であるMPBなどがふんだんに盛り込まれたの地でしか為し得ないと思える作品で、ブラジリアン・ジャズの魅力を知るには良い一枚だ。

アルバムは来日公演も行った2018年に、ブラジルのブルーノート・リオで行われた演奏を収録している。バンドのメンバーにはジャヴァン(Djavan)やマリア・ベターニア(Maria Bethânia)といったシンガーのサポートで知られるギタリストのジョアン・カスチーリョ(João Castilho)や、エヂ・モッタ(Ed Motta)やジェイ・ヴァケール(Jay Vaquer)との共演で知られるベーシストのアレシャンドリ・カタタウ(Alexandre Katatau)などが参加。
ジャズ・スタンダードの(1)「Killer Joe」などにもブラジルのテイストを織り込み、ブラジリアン・ジャズらしい個性的なサウンドに仕上げられている。

A.C.ジョビンの名曲(7)「Água de Beber」の演奏動画。

“ジスモンチの愛弟子”デリア・フィッシャーとの共演も

2020年6月の『Ao Vivo no Rio』リリース後、ヒカルド・バセラールはデリア・フィッシャー(Delia Fischer)との共演でミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)の名曲「Nada Será Como Antes」を演奏したシングル『Nada Será Como Antes (Ao Vivo) 』もリリースしている。

この曲の歌詞は軍事政権下のブラジルで書かれたものだが、バセラール曰く、新型コロナ禍での人々が感じている不安にも通じるところがあるという。
現在の状況についてバセラールは、「新型コロナで身近な人を亡くした人もいる中、新たな日常に適応し、新型コロナのために見えなくなってしまったものに立ち向かっていく必要がある」とコメントしている。
また新型コロナによる自主隔離期間には多種多様な経験が生みだされることになったとも話す。「音楽は個人的また精神的、感情的な次元で、物事に意味を与える視点をつなぎ合わせ構築する上で欠かせない媒体だ。芸術や抽象化のない生活は意味がない」。

ヒカルド・バセラールとデリア・フィッシャーとの共演歴は長く、古くは1993年にリオ・ジャズクラブで開催されたデリアのライヴにバセラールが参加した頃まで遡るようだ。

歌手/ピアニストのデリア・フィッシャーをゲストに迎え、ミルトン・ナシメントの名曲「Nada Será Como Antes」を演奏するヒカルド・バセラール

ヒカルド・バセラール 略歴

ピアニスト/作編曲家のヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)は1967年生まれ。学生時代は主にクラシック音楽を学んだが、「Totalmente Demais」の大ヒットで知られる1985年に結成されたブラジルの人気ロックバンド、ハノイ・ハノイ(Hanói-Hanói)のメンバーだったことでも知られている。

2001年にはクラシック音楽の影響も色濃く現れた初のソロアルバム『In Natura』を発表。
2018年には、2017年に没後35周年を迎えたジャクソン・ド・パンデイロに捧げられた自身3作目となる『Sebastiana』をリリース。“ブラジル音楽の再解釈”をコンセプトに数々の名曲や自作曲を収録したこの作品は、2019年のグラミー賞ノミネート候補にもなり、同年には来日公演も果たしている。

Ricardo Bacelar – piano, keyboards, voice
João Castilho – guitar
Danilo Sina – sax, flute
Renato Endrigo – drums
Alexandre Katatau – double bass
André Siqueira – percussion

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