バロック時代の音楽をテーマにしたジャズ組曲。E.ピエラヌンツィ×J.サムセン 至高のデュオ

Enrico Pieranunzi & Jasper Somsen - Voyage in Time

エンリコ・ピエラヌンツィ&イェスパー・サムセンのデュオ作品

イタリアのピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)とオランダのベーシスト、イェスパー・サムセン(Jasper Somsen)。ヨーロッパのジャズを代表する名手二人によるデュオアルバム『Voyage in Time』は、西洋クラシック音楽をテーマにイェスパー・サムセンが書いた9曲を共同作業でアレンジし演奏した美しいアルバムだ。

バロック時代の典型的な舞踊組曲にインスパイアされた楽曲群は、タイトルも「パヴァーヌ」「メヌエット」「サラバンド」など古典音楽を連想させ、対位法的な表現も頻出するが、リズムやハーモニーの構成、アドリブ主体の演奏はジャズの語法に則っており、結果としていかにも“ヨーロピアン・ジャズ”な音楽となっている。これまでにピエラヌンツィとサムセンはピアノトリオでも演奏をしてきているが、今回のドラムレスの編成はよりピアノとベースを親密な空間に閉じ込め、アルバムタイトルが示すとおり時空の航海へとリスナーを道連れにする。

ジャズの第一線で活躍しながら、クラシック音楽への深い敬愛を忘れない二人による気品高い素晴らしい作品だ。

(1)「Pavane」

Enrico Pieranunzi プロフィール

ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィは1949年イタリア生まれ。父親はジャズギタリストで、エンリコもまた幼い頃から音楽を学んだ。クラシックのピアニストとして1973年に音楽の教授となったが、1975年には教育現場を去り、ジャズのトリオや小規模アンサンブルで演奏するようになった。

これまでに数多くの作品を録音しており、ジム・ホール(Jim Hall)、マーク・ジョンソン(Marc Johnson)、チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)、ジョーイ・バロン(Joey Baron)、チェット・ベイカー(Chet Baker)といったレジェンドたちと演奏を共にしてきたイタリアの至宝である。

Jasper Somsen プロフィール

ベースのイェスパー・サムセンは1973年オランダ生まれ。ユトレヒトとアムステルダムの音楽院でジャズとクラシックのコントラバスを学んでいる。初リーダー作は2010年の『Dreams, Thoughts & Poetry』で、これはピエラヌンツィの楽曲をリスペクトしカヴァーしたもの。これまでにピエラヌンツィのほか、ピーター・アースキン(Peter Erskine)、ジョーイ・カルデラッツォ(Joey Calderazzo)、ジェフ・バラード(Jeff Ballard)、ジャン=ミシェル・ピルク(Jean-Michel Pilc)、ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)といった欧米を代表するミュージシャンと演奏を共にしてきた。

2021年以来アーネムの芸術大学で教鞭をとるなど、現在は演奏とスタジオ制作の多忙なスケジュールを離れ、作曲と指導に時間の多くを割いている。

Enrico Pieranunzi – piano
Jasper Somsen – double bass

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