高次元から意識へと働きかけ拡張させる、UKジャズ最前線 The Comet Is Coming 待望の新作

The Comet Is Coming - Hyper-Dimensional Expansion Beam

コメット・イズ・カミング新作『Hyper-Dimensional Expansion Beam』

現行UKジャズシーンを代表するサックス奏者シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)率いるトリオ、コメット・イズ・カミング(The Comet Is Coming) の新作『Hyper-Dimensional Expansion Beam』がリリースされた。何気にすでに10年近く活動しているバンドであり、シャバカのこれまでの主要プロジェクトであったサンズ・オブ・ケメット(Sons Of Kemet)の活動停止が6月に発表された今となっては、このトリオが現在のシャバカの主要な活動体と見られている(Shabaka and the Ancestors もあまり動きがないようだ)。

今作もしっかりとコンセプチュアルで、作り込まれたシンセのサウンドで幕を開け、シンセベースとドラムスによる重厚なビートの上で嗚咽とも咆哮ともつかないテナーサックスが轟く。アルバムタイトルである“超次元拡張ビーム”とはいささか誇張な気がしなくもないが、常に人類のロマンであり続けるサイエンス・フィクション的な音世界は見事だ。

(2)「TECHNICOLOUR」のMV

近未来感と伝統文化や異文化が節操なく混ざり合い、カオスな展開を見せる(4)「TOKYO NIGHTS」、スピリチュアルな謎の象徴として聳え立つピラミッドをテーマとした(5)「PYRAMIDS」、悪魔的で神秘主義的な何かを感じさせる7分弱の(7)「ANGEL OF DARKNESS」など、 意識の高揚をもたらす全11曲。

4日間の即興演奏主体のレコーディングと、その後のダン・リーヴァーズ(Dan Leavers, key)とマックス・ハレット(Max Hallett, dr)による入念なポスト・プロダクションによって誕生した本作は、英国のハイブリッドなジャズシーンを象徴するような作品であることは間違いなさそうだ。

(1)「CODE」のライヴ演奏動画。

The Comet Is Comingは2013年にダン・リーヴァーズ(Dan Leavers, key)とマックス・ハレット(Max Hallett, dr)のエレクトロデュオ「Soccer96」 のジャムセッションにシャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings, ts)が乱入したことをきっかけに結成。
2015年に最初のEP『The Prophecy』(預言)をリリースすると、英DJ Mag誌で9.5/10の高評価を得るなどたちまち各地で絶賛され話題に。
2016年にはフルアルバム『Channel The Spirits』を発表すると、これは英国の年間ベストアルバムを決めるマーキュリー賞にノミネートされた。

2019年には日本のフジロックフェスティバルにも出場を果たし、熱狂的なオーディエンスに迎えられた。

The Comet Is Coming :
King Shabaka (Shabaka Hutchings) – tenor saxophone
Danalogue (Dan Leavers) – synth
Betamax (Max Hallett) – drums

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