気鋭ジャズピアノ奏者ヤニフ・タウベンハウス、リリシズムに溢れる初のソロピアノ作『Hope』

Yaniv Taubenhouse - Hope

気鋭ピアニスト、ヤニフ・タウベンハウスがソロで魅せる新譜

ニューヨークで活躍するイスラエル出身のピアニスト/作曲家ヤニフ・タウベンハウス(Yaniv Taubenhouse)の最新作『Hope』は、彼の卓越したリリシズムを堪能できる美しいソロピアノ作品だ。

約65分間の今作は、ヤニフ・タウベンハウスが思慮深くピアノと向き合い、まるで古い友と語らいあっているかのような愛情深さが非常に印象的。まだ30代中盤という若さの彼だが、ここには人生の深みをすべて知り尽くしたような男の哲学があり、ある種の老練さを感じさせる(彼のピアノは以前からそうだが、やはりソロになるとそれがより一層強くなる)。

オリジナル8曲のほか、偉大なジャズの先人たちの曲の再解釈も。コール・ポーター(Cole Porter)の(2)「It’s Alright with Me」、ケニー・ホイーラー(Kenny Wheeler)の(3)「Consolation」、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の(10)「We See」、そしてヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)の(11)「Two for the Road」はいずれも古い曲だが、ジャズそのものの歴史や、ジャズメンたちが歩んできた幾つもの人生に深く思いを巡らせるような内省的な演奏はあまりに美しい。

(8)「Hope」

アルバム表題曲である(8)「Hope」はヤニフ・タウベンハウスのデビュー作『Here from There』(2014年)のラストに収録されていた曲で、のちにフランスの歌手サラ・エデン(Sarah Eden)が詩をつけ『Ailleurs』(2018年)で「Chante」として再収録もされた曲。短調で低音が多用される前半部に始まり、後半では一縷の希望を感じさせる煌びやかなピアノの高音が目立つなど物語性も美しい。

ジャケットに写る広大な草原は、イタリア・ウンブリア州の景勝地ピアノ・グランデ(Piano Grande)。2016年10月に見舞われた大地震でこの地の丘の村カステルッチョ・ディ・ノルチャ(Castelluccio di Norcia)は壊滅的な打撃を受けたが、現在は徐々に再建されているようで、“希望”をコンセプトに据えた今作を的確に象徴している。

Yaniv Taubenhouse 略歴

ヤニフ・タウベンハウスは1987年イスラエル・テルアビブ生まれ。6歳からクラシックのピアノを始め、テルマ・イェリン芸術高校卒業後、著名なピアノ教師パヴリーナ・ドコフスカ(Pavlina Dokovska)に師事するために米国に移住。その後ユラ・マルグリス(Jura Margulis)にも師事し、クラシック・ピアニストとしての腕を磨きつつも2013年には奨学金を得てニューヨークのニュースクール・オブ・ジャズに入学。活動の主軸をジャズに移してきた。

2014年にピアノトリオ作『Here from There』でアルバムデビュー。翌2015年には『Moments in Trio, Vol. 1』をリリースし、イスラエルから現れた新星としてここ日本でも紹介された。
自身のトリオでの活動のほか、近年ではギタリストのダニエル・ウェイス(Daniel Weiss)の初リーダー作『Dive』(2021年)でもピアニスト/共作者として参加するなど、充実するイスラエル・ジャズ界隈の中でも大きな存在感を見せてきている。

(10)「We See」

Yaniv Taubenhouse – piano

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