ナタリア・ラフォルカデ、より深化した新譜『De Todas las Flores』
ルーツ・ミュージックを自身の表現に取り入れ、近年激良作を連発しているメキシコのシンガーソングライター、ナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)の新作『De Todas las Flores』は、ほぼ自作曲で固められ、これまた彼女のディスコグラフィを代表しそうな素晴らしい作品だった。
しばらく続いたメキシコの音楽文化への探求の旅のあと、ナタリア・ラフォルカデは再び自身と深く向き合い、3年間に及ぶ構想・制作期間を経て今作を完成させたという。アルバムのミックスはパリ滞在中の1ヶ月間で行われ、モンマルトルの丘で雨が降るのを眺めたり、公園で朝食にクロワッサンを食べたり、ジヴェルニーのモネの庭を訪れたりと、そうした豊かな時間を過ごすことでインスピレーションを得た。彼女は今作は“思いやり、愛、良心から”創られているという。確かにこの作品からは世界的な成功と名誉を得たはずの彼女にあってさえ、生きることの儚さを感じさせるような悲しげなメロディーに溢れている。
今作には実験的な音楽性で知られるギタリストのマーク・リボー(Marc Ribot)、若干20歳の天才ピアニストのエミリアーノ・ドランテス(Emiliano Dorantes)、ソウル・コフィングのベーシストであるセバスチャン・スタインバーグ(Sebastian Steinberg)、そしてフランスのドラマー、シリル・アテフ(Cyril Atef)といった才能たちが参加。ナタリア・ラフォルカデ自身も弾くガットギターを優しく爪弾く。
メキシコ南部のマサテック族のシャーマン/詩人マリア・サビーナ(María Sabina, 1894 – 1985)の詩に基づく(7)「María la Curandera」を除いて全てナタリア・ラフォルカデの作詞作曲。(2)「De todas las flores」や(6)「Pajarito colibrí」、(10)「Muerte」など素朴で美しい曲が多く、洗練されたサウンド面も含めアーティストとしての成熟を伺わせる。
メキシコを代表するSSW、Natalia Lafourcade
メキシコを代表するシンガーソングライターであるナタリア・ラフォルカデは1984年生まれ。
彼女は音楽的に恵まれた家庭で育ち、幼少時から子供向け音楽教育法”Macarsi Method”を考案した母親からその実践指導を受けていた。
2002年のデビューアルバム『Natalia Lafourcade』はそのポップで天真爛漫な彼女のイメージとともに世界的に大ヒットし、日本でもソニー・ミュージックからあまりに酷く能天気なキャッチコピーとともに大々的に売り出された。
当初は前述のようにダンス・ミュージックやヒップホップ、ポップロックを軸としたサウンドだったが、メキシコの様々なアーティストと共演を重ねるうちに次第にルーツ・ミュージックにも傾倒し、タイニー・デスク・コンサートなどでも音楽家としての成熟を見せていく。
その活動の中でこれまでにグラミー賞、ラテングラミー賞など多くのアチーブメントを得ており、2017年にはディズニー/ピクサー映画『Coco(邦題:リメンバー・ミー)』の主題歌の歌手にも抜擢された。