Luciana Viana & Eddy Andrade 至高のデビュー作
6年間にわたり声とギターのデュオとして活動してきたルシアーナ・ヴィアーナ(Luciana Viana)とエディ・アンドラージ(Eddy Andrade)が、ブラジル随一の音楽家であるアンドレ・メマーリ(André Mehmari)の総指揮のもと、テコ・カルドーゾ(Teco Cardoso)やカロル・パネッシ(Carol Panesi)といった演者の協力も得て最高のデビューを飾った。
デュオの初のアルバム『Raízes nas Nuvens』は、ブラジルの伝統に根差しつつ、音楽的な現代性や先見性、哲学、芸術性を兼ね備えたブラジルの音楽シーンの素晴らしさを象徴するような作品に仕上がっている。作曲は主に女性ヴォーカリストのルシアーナ・ヴィアーナによって行われ、それを男性ギタリストのエディ・アンドラージが編曲する。今作ではさらにアンドレ・メマーリによる木管や弦のアレンジが行われ、メマーリ自身の即興性の高いピアノやシンセサイザー、マリンバがインスピレーションを最大化。他に類を見ない高度な音楽を構築する。
低音は深みがあり、高音はよく伸びるルシアーナのヴォーカル、エディの温かみのあるガットギター、そしてバックのエドゥ・ギマランイス(Edu Guimarães)のサンフォーナ(アコーディオン)、テコ・カルドーゾのフルートやサックス、アンドレ・メマーリの自由なピアノ…。各曲ごとに細やかなクリエイティヴィティが発揮され、アルバム全体での完成度も素晴らしい。
本作唯一のカヴァー(9)「Tristeza do Jeca」はアンジェリーノ・ヂ・オリヴェイラ(Angelino de Oliveira, 1888 – 1964)の代表曲のカヴァーで、ブラジルの古風なカントリー・ミュージックのサウダーヂが香る美しいアレンジが施されている。
個人的には、近年クラシックの器楽曲寄りの活動・作品が多く、歌に対するアレンジがご無沙汰になっていたアンドレ・メマーリの才覚のうち、もっとも聴きたかった部分が久々に味わえた作品とも思えた。ソロピアノによる前奏曲的な(3)「O Que a Vida Quer da Gente」から(4)「Coragem」への流れや(11)「Rastro de Nuvem」でのシンセ使いなど、2010年代にレアンドロ・マイアとの『Suíte Maria Bonita e Outras Veredas』、アレシャンドリ・アンドレスとの『Macaxeira Fields』といった過去の傑作群を彷彿させるものがあり、やはりメマーリにはもっとこうした路線の作品をプロデュースしてほしいなと感じる。
プロフィール
2016年頃に結成されたシンガー/作曲家のルシアーナ・ヴィアーナ(Luciana Viana)とマルチ楽器奏者/編曲家エディ・アンドラージ(Eddy Andrade)のデュオは、主には1960年代から1970年代にかけてのブラジルの地方の伝統的な音楽やジャズ、MPB(ブラジルのポピュラー音楽)の影響を受けている。主にデュオで活動を行うが、コンサートでは必要に応じてバンドや木管などの編成を試みているようだ。
今回のデビュー作ではそうしたルーツから自然と滲み出る音楽性に加えて、現代性や未来志向の音も取り入れ、連続性の先を探求する彼らの姿勢を明示する。
Luciana Viana – vocal
Eddy Andrade – guitar
Cecília Collaço – drums
Gabriel Peregrino – percussion, chorus
Henrique Simas – acoustic bass, electric bass
André Mehmari – piano, synth, marimba
Teco Cardoso – flute, saxophone
Carol Panesi – violin
Edu Guimarães – sanfona
Domingos de Salvi – viola caipira
Lucas Andrade – guitar
Klesley Brandão – flugelhorn
Ana Lis Marum – chorus
Luisa Meirelles – chorus