混沌の寸前が精神を浄化させる。ポルトガル出身の前衛ドラマー、ジョアン・レンカストレ新譜

Joao Lencastre - Safe in Your Own World

ジョアン・レンカストレ、前衛的カルテットでの新譜

ポルトガル出身のドラマー/作曲家ジョアン・レンカストレ(João Lencastre)が初のカルテット編成で録音した新作『Safe in Your Own World』は、独特の哲学を持った音楽世界に誘う即興要素の強いジャズ作品だ。爆音で聴くことを推奨したい。

カルテットはジョアン・レンカストレ以下、アルゼンチン出身のピアニストレオ・ジェノヴェス(Leo Genovese)、米国のベース奏者ドリュー・グレス(Drew Gress)、そしてブラジルのギタリストのペドロ・ブランコ(Pedro Branco)で構成。

アルバムはポルトガルでツアーの合間にスタジオ録音され、その場でアレンジを変えることになった(1)「Staying Power」以外はすべて最初のテイクが採用となり、合計で3時間もかからなかったという。それだけに各曲がまるで場末の酒場の片隅で演奏するカルテットのような臨場感と勢いがあり、エネルギーとアルコールの匂いに満ちている。

(1)「Staying Power」

演奏はなかなかにクレイジーだ。おそらく予め書かれた部分の割合は相当に少なく、かなりの部分が演者の裁量に任せられている。アルバムタイトルもパンデミックを意識したものだろうが、彼らの音楽はそんな社会に溜まってゆく鬱憤を晴らすように気持ちよく暴れてくれる。美しい調和からカオスを経て、また調和へと立ち戻るアンサンブルの様相はある種の精神浄化にも役に立つ。

João Lencastre プロフィール

ジョアン・レンカストレはポルトガル・リスボン出身。13歳でドラムスの演奏を始め、それ以来メタル、レゲエ、アフロビート、エレクトロニック、ビッグバンド、オルタナティヴ・ロック、そしてあらゆる種類のジャズなど、さまざまなスタイルの音楽グループと共演してきた。長らくニューヨークで活動しており、これまでにリーダーとして10枚以上のアルバムをリリースしている。

影響を受けたドラマーとしてトニー・ウィリアムス、ポール・モチアン、ジャック・ディジョネット、エルヴィン・ジョーンズ、ブライアン・ブレイドなどの名を挙げているが、ドラムスのないソロピアノやドラムレスの編成のレコードからも多くのインスピレーションを受けてきたようだ。
演奏はインスピレーションや即興を重視しており、特にジャズを演るときはパターンやリックはまったく意識せずに、他の演奏者のプレイに呼応し即座に反応を返すことをモットーとしている。

Leo Genovese – piano
Drew Gress – double bass
Pedro Branco – guitar
João Lencastre – drums

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