ギター2本のクラリネットの温かな響き。イタリアン・ジャズの美の極致『Girasoli』

Gabriele Mirabassi, Nando Di Modugno & Pierluigi Balducci - Girasoli

ガブリエーレ・ミラバッシと二人のギタリストが描く絵画的な作品

絵画的な美しい音楽を描き続けてきたイタリアの3人──クラリネット奏者ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)、ギタリストのナンド・ディ・モドゥーニョ(Nando Di Modugno)、バス・ギター奏者ピエルルイジ・バルドゥーチ(Pierluigi Balducci)──による3枚目のアルバム『Girasoli』

これまでの彼らの作品同様に、オリジナル曲やイタリアの名曲、そしてブラジル音楽などからレパートリーを選曲。ジャンルは多様だが、編曲や演奏には彼らのオリジナリティが発揮され唯一無二の素晴らしい音楽をたっぷりと聴かせてくれる。

アルバムの冒頭を飾る(1)「De Coração a Coração」はブラジルのショーロの音楽家ジャコー・ド・バンドリン(Jacob do Bandolim)作で、ショーロらしい半音進行や一種の気怠さが優雅な黄昏の刻を演出する。

(3)「Party in Olinda」は前作『Tabacco e Caffè』にも収録されていた曲の再演。ブラジル・ミナスのギタリスト、トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)による作曲で、ミナス音楽らしい爽やかなハーモニーと旋律がここでも印象的だ。

ガブリエーレ・ミラバッシ作曲の(5)「Chisciotte」はどこかスパイ映画の曲のような怪しげなリズムに軽快なスウィング、クラリネットのポルタメント奏法などが楽しい。

キューバのヌエバ・トローバを代表するパブロ・ミラネス(Pablo Milanés)作の名曲(6)「En La Orilla Del Mundo(世界の果てに)」も抒情的だ。原曲で描かれる過酷な未踏の道を歩む革命的な人物のように、曲中でいくつもの山を乗り越え、諦観の寸前でも挫折せずに信念に向かう圧倒的な表現力が素晴らしい。

(8)「Love Theme from I Girasoli」はヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)作曲の映画『ひまわり』のテーマ曲だ。ピエルルイジ・バルドゥーチによるバス・ギターのイントロのあと、ナンド・ディ・モドゥーニョのギターが厳かに主旋律を奏でる。ギターもクラリネットも木でできた楽器だが、その温かな響きに耳を預けられることは至福この上ない。

(8)「Love Theme from I Girasoli」

(9)「Minuano」はパット・メセニー(Pat Metheny)とライル・メイズ(Lyle Mays)の名コンビによる楽曲のカヴァー。

サウンド面ではこれまでの作品とかなり異なり、クラシック音楽の録音に特徴的なホールでの自然な音響を活かしたアンサンブルのライヴ録音となっており、特にクラリネットに比べ音量の小さいギター2本の音は決して明瞭ではなく、普段ジャズを愛好するリスナーにとっては好みが分かれるところかもしれない。

Gabriele Mirabassi 略歴

クラリネットのガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)は1967年イタリア・ペルージャ生まれ。チェンバー・ジャズの第一人者としてこれまでに数多くのアルバムを発表しており、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)、マーク・ジョンソン(Marc Johnson)、スティーヴ・スワロウ(Steve Swallow)、ジョン・テイラー(John Taylor)といった国内外の著名アーティストとの共演も多数。イタリアを代表するジャズレーベル、EGEAの看板アーティストとして知られている。

ブラジル音楽にも強く傾倒し、これまでにギタリスト/作曲家のギンガ(Guinga)や、ピアニスト/作曲家のアンドレ・メマーリ(André Mehmari)、ギタリストのセルジオ・アサド(Sérgio Assad)といったブラジルを代表する音楽家たちとアルバムを制作してきた。
実弟は人気ピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)。

Gabriele Mirabassi – clarinet
Nando Di Modugno – classical guitar
Pierluigi Balducci – classical bass guitar

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