ブラジル音楽の様式美の真髄。歌姫ホベルタ・サー新作『Sambasá』は完璧なサンバ・パゴーヂ

Roberta Sa - Sambasá

完璧なサンバ・パゴーヂ。ホベルタ・サーの新作『Sambasá』

ブラジルの歌姫ホベルタ・サー(Roberta Sáの新作 『Sambasá』は、彼女らしい飾らない美しさがとにかく魅力的なド直球のサンバ・アルバムだ。ヴィオラォン(ガットギター)やカヴァキーニョの乾いた弦の音、パンデイロやタンボリン、スルドといったブラジル特有のパーカッションが刻むリズム。それらの軽やかさと、長調と短調を自在に行き来するサンバに特徴的なコード進行、そして起伏の激しいヴォーカルのメロディーラインが絶妙な幸福感と郷愁感を誘う。ブラジル音楽の真髄を見せつけられる想いだ。

(1)「Sem Avisar」はコーラスのサウダーヂ満載の旋律が堪らない名曲。楽曲の美しさもさることながら、やはりホベルタ・サーという稀代の歌手の声の魅力が最大限に引き出されており、いきなり今作の大成功を予感させる。

(1)「Sem Avisar」

今作でピアノとアコーディオンを担当するキコ・オルタ(Kiko Horta)によるアコーディオンの音色がブラジル北東部音楽の素朴さを感じさせる(2)「Luz da Minha Vida」も素晴らしい。キコ・オルタは他の曲でも随所でジャジーなピアノなど効果的な演出を見せており、本作の魅力をより高めている陰の立役者となっている。

今作のゲストとして、パゴーヂ界の大物二人の参加も見逃せない。(4)「Pago Pra Ver」にはゼカ・パゴヂーニョ(Zeca Pagodinho)が、また、(6)「Sufoco」にはペリクレス(Péricles)が参加しアルバムにサウダーヂ感を上乗せする。ブラジルでは絶大な人気を誇るこの二人の渋く枯れた歌声はホベルタ・サーの透明で美しい歌声の良い対比となり、作品のアクセントとなっている。

ゼカ・パゴヂーニョとの共演(4)「Pago Pra Ver」

Roberta Sá プロフィール

ホベルタ・サーは1980年12月19日、リオグランデ・ド・ノルテ州生まれ。9歳のときにリオデジャネイロに移住している。
ヴォーカリストとしてのキャリアは2002年にヴォーカル・オーディション番組に参加したことに始まる。彼女は優勝することはできなかったが、その歌唱は強く印象を残し、その後フェリペ・アブレウ(Felipe Abreu, 歌手フェルナンダ・アブレウの兄)がヴォーカル・コーチとなりその後のショーへの参加を勧められた。ほどなくしてホベルタはプロデューサー/弦楽器奏者のホドリゴ・カンペーロ(Rodrigo Campello)と出会い、プロモーション用として『Sambas & Bossas』を録音した。このアルバムは長らくお蔵入りとなっていたが、2021年に正式にリリースされ話題となった。

2005年にファーストアルバム『Braseiro』をリリースし人気を得ると、2007年の2nd『Que Belo Estranho Dia Pra Se Ter Alegria』ではベスト・シンガー、ベスト・アルバム、ブレイクスルー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーなどの賞を獲得しラテン・グラミー賞にもノミネートされた。
その後も活躍を続け、現在までブラジルを代表する女性歌手として高く評価されている。

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