様々な文化からの影響を感じさせるフランスのバンド、Kolinga
ヴォーカル/作詞作曲のレベッカ・ンボングー(Rébecca M’Boungou)とギターのアーナウ・エスター(Arnaud Estor)のデュオ・ユニットとして2018年にデビュー作『Earthquake』をリリースしたコリンガ(Kolinga)が、6人編成となってリリースした2ndアルバム『Legacy』。この編成強化により、ギターとヴォーカルを中心にサウンドが組み立てられていた前作から大幅に色彩感がアップ。当初より高い評価を得ていたレベッカの歌声の魅力はそのままに、より訴求力の高い作品に仕上がった。
Kolingaの音楽はジャズやソウル、アフリカ音楽、レゲエ、ヒップホップなど様々な音楽のスタイルを取り入れながら、確固とした世界観を持つ。タイトルの“遺産”のとおり、アルバムはレベッカ・ンボングー自身の体験をもとに個人や家族の精神的な遺産を洗練された音楽にのせて表現。
まずは母親への感謝を歌う(2)「Mama (Don’t Let Me)」は普遍的だが圧巻の素晴らしさだ。
この楽曲でレベッカは幼少期の不安と、自身の成長にともなって老いていく母親への思いやりを見事に表現している。幼少期の娘の気持ちを描く前半では「ママは愛してくれた、与えたくれた、癒してくれた/笑ってくれた、ハグしてくれた、泣いてくれた」と歌い、「ママ、私を置いていかないで」と願う。楽曲は中盤で大きな場面転換があり、思春期の様相を効果的に描くが、思い出で繋がった強い絆は再び母娘を結び「ママは審判しなかった、理解してくれた、傾聴してくれた/私の怒り、涙、喜びのすべてを受け入れてくれた」と感謝を捧げ、ラストでは「私はあなたを独りにはしない」と決意する。
(3)「Ça va aller (mbo buba)」は冒頭部分はアーナウ・エスターのギターとレベッカの声のみという前作を彷彿させる構成だが、徐々にバンドが加わりアフリカのリズムやリンガラ語(レベッカのルーツであるコンゴで広く使用される言語)でのラップで盛り上がる。
レベッカは本作で「私が一番よく知っていること、つまり私の人生について話したかった」と語る。混血としての彼女のこれまでの人生における様々な経験を、その時々で最適な音楽的なアレンジで表現。今作は音楽的にも非常にチャレンジングだが、それはレベッカ自身の人生が抱える複雑さや痛み、そして喜びや希望が完璧に反映されたものになっているが故のように思う。
レベッカ・ンボングーとコリンガ
レベッカ・ンボングー(Rébecca M’Boungou)はコンゴ出身の父親と、フランス人の母親のもとに生まれた。彼女が父親の国であるコンゴを初めて訪れたのは12歳のとき。以来、彼女は音楽を自身の表現のフィールドに定め、その繊細で豊かな感性を形にする場所を探してきた。
最初はアーナウ・エスター(Arnaud Estor)とのデュオとしてユニットKolingaを結成、のちに優れた音楽家/マルチ奏者ジェローム・マルティノ=リコッティ(Jérôme Martineau-Ricotti)をはじめとし自身の表現に呼応するメンバーを集め、創造的な音楽集団を築き上げた。
Kolinga :
Rébecca M’Boungou – vocals, guitar
Arnaud Estor – guitar
Jérôme Martineau-Ricotti – drums, piano, guitar
Nico Martin – bass
Jérémie Poirier-Quinot – keyboards, chorus, flute
Vianney Desplantes – euphonium, flugabone