西アフリカ音楽×R&B/ソウルの言葉にできない魅力。セネガルの歌姫ジュリア・サール 9年ぶり新譜

Julia Sarr - Njaboot

セネガルの歌姫ジュリア・サール、9年ぶり新譜『Njaboot』

セネガル出身の歌手ジュリア・サール(Julia Sarr)の新作『Njaboot』が素晴らしい。
2014年の『Daraludul Yow』以来の3rdアルバムとなる今作では、前作にも深く関わっていたフランスのマルチ奏者/作曲家フレッド・ソウル(Fred Soul)らを中心としたオーガニックで洗練されたサウンドに乗せて至高のアフロ・ソウルを聴かせてくれる。

主にウォロフ語(セネガルでは公用語であるフランス語以上に、ウォロフ語の話者が多いという)で歌われる彼女の歌唱はクセがなく美しいが、それでいて力強さも感じさせる不思議なものだ。バックではピアノのジャジーなハーモニーが多用されつつ、トーキング・ドラムなどアフリカを象徴する打楽器の音やリズムも。個性的ながら聴きやすく、万人におすすめできる作品に仕上がっている。

(5)「Njaboot」のライヴ音源。

(7)「Habib」はユッスー・ンドゥールのプロデューサーとして知られ、2018年4月に肺の感染症のため53歳で亡くなったセネガルのミュージシャン、 ハビブ・ファイユ(Habib Faye)に敬意を表している。「心は崩れ落ちた / 痛みは私たちを驚かせた / 彼はいい人だった / 私たちの友人はもういない」とジュリア・サールは悲痛な声で歌う。

R&Bやソウル、ジャズの様式を感じさせながら、その根底に西アフリカの深い歴史を秘めた稀に見る傑作と言えるだろう。現代のポピュラー音楽のシーンに多様な“ワールド・ミュージック”由来のエッセンスで問いかける寡作の芸術家。いまのところ8〜9年のスパンでしか聴くことのできない奇跡の歌声に、じっくり耳を澄ませたい。

Julia Sarr プロフィール

ジュリア・サールはセネガルの首都ダカール生まれ。歌手としてのキャリアはバッキング・ヴォーカリストとして始まり、ユッスー・ンドゥール(Youssou N’Dour)、サリフ・ケイタ(Salif Keïta)、ウム・サンガレ(Oumou Sangaré)、ルクア・カンザ(Lokua Kanza)、MCソラー(MC Solaar)といったアーティストたちと仕事を行なってきた。

何年もの間、静かにソロの野心とソングライティングを育んだ後、ジュリアはフラメンコに影響を受けたフランス人ギタリストのパトリス・ラローズ(Patrice Larose)とともに2005年にデビューアルバム『Set Luna』をリリース。同年に米国カーネギー・ホールで演奏を披露するなど、高い評価を得た。
2014年に2ndアルバム『Daraludul Yow』をリリース。日本でも高く評価され、アフリカ発のポピュラー音楽の最重要アーティストとして注目される存在となっている。

Julia Sarr - Njaboot
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