TikTokから火がついたロマンティスト、ルーカス・マメーヂ
ブラジル・ペルナンブーコ州都レシーフェのシンガーソングライター、ルーカス・マメーヂ(Lucas Mamede)はTikTokで100万人以上のフォロワーを抱える人気者だ。
彼は高校3年生の2020年からギターでの弾き語り動画をTikTokにアップし始めるとすぐにファンがつき始め、2021年に3曲のオリジナルをシングルでデジタル・リリース。特に『Conto os Dias』は大ヒットし、北東部の新世代の音楽家の登場を強く印象付けた。
そんな彼が満を持してリリースした作品が『Já ouviu falar de amor?』(2023年)。“愛について聞いたことがある?”という意味のタイトルで、ロマンスについての曲ばかりのアルバムだ。
アルバムのプロデュースはマリーザ・モンチの諸作などで知られるアレー・シケイラ(Alê Siqueira)が手掛け、録音にはドラマーのチアゴ・ハベーロ(Thiago Rabello)、アコーディオン奏者のメストリーニョ(Mestrinho)、ヴァイオリンのヒカルド・ヘルス(Ricardo Herz)、チェロのジャキス・モレレンバウム(Jaques Morelenbaum)といったブラジルを代表する音楽家が参加し、今作が初スタジオ録音だという新星SSWを強力にサポートしている。
収録曲は彼のオリジナルのほか、アナ・カエターノ(Ana Caetano)の(4)「Dia de chuva」、パウリーニョ・ペドラ・アズール(Paulinho Pedra Azul)の(11)「Jardim da fantasia」といったカヴァーも。曲調も北東部のリズムを強調したもの、サンバ、レゲエの影響を受けたものなど幅広く、ヴィトール・クレイ(Vitor Kley)、アナヴィトリア(Anavitória)、ジャヴァン(Djavan)、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)などブラジル音楽の新旧世代の影響も感じさせる。
卓越したソングライティングの技術と感性はもちろん、その穏やかで柔らかい声も魅力的だ。
SNSから火がついた新世代を象徴するような音楽家が、これからどのようなブラジル音楽を聴かせてくれるのか、この先も楽しみだ。