LRK Trio、初のオーケストラ共演作
ロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trioが初めてオーケストラと共演したライヴ・アルバム『Concert at Vdnh Cosmos』がリリースされた。これは2022年12月18日にモスクワの歴史ある全ロシア博覧センターの宇宙パビリオンで演奏されたもので、LRK Trioの持ち前の叙情性と、現代音楽のオーケストラであるオープンサウンド・オーケストラ(Opensound Orchestra)の滋味深いサウンドが見事に融合した、傑作と呼べる作品に仕上がっている。
コンサートでは前作『Prayer』から2曲、ほかトリオの過去作やピアニストのエフゲニー・レベジェフ(Evgeny Lebedev)のソロ作から選曲されており、アルバムには収録されていないが下記のライヴ動画を見るとアントニオ・カルロス・ジョビンの「Zingaro(別名:Retrato Em Branco E Preto)」のカヴァーも演っているようだ。
(1)「Soyuz-Apollo」は電子ドラムも用いスペーシーな表現をするピアノトリオで演奏。注意深く構成された楽曲は徐々に物語を加速させる。コンサート会場である宇宙パビリオンにはロシア製の人工衛星も展示されているなど、場の雰囲気も相まって一種独特の音響空間を形成している。
(2)「Through the Winter」はヴァイオリンの独奏から始まり、叙情性と緊張感が絶妙なバランスで保たれた美しいアンサンブルを展開。また(7)「Thoughts Of」ではエフゲニー・レベジェフが最初に手にした楽器であるアコーディオンの演奏も披露している。
まさに、芸術大国ロシアの音楽の素晴らしさを強く印象づける作品だ。独創的なLRK Trioと、それにぴったりと寄り添い素晴らしいサポートをするOpensound Orchestraが合わさったときの完璧な美しさに深い感動を覚える。
ロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trio
LRK Trioは、ピアノのエフゲニー・レベジェフ(Evgeny Lebedev)、ベースのアントン・レヴニュク(Anton Revnyuk)、ドラムスのイグナト・クラフツォフ(Ignat Kravtsov)により結成されたピアノトリオ。グループ名は3人のイニシャルに因んでいる。
2015年作『Open String』が彼らの最初のリリースだが、当時はトリオ名がなく、アルバムの名義は「Evgeny Lebedev & Anton Revnyuk」となっていた。
初めて「LRK Trio」名義でリリースした2017年作『If You Have a Dream』が欧州などでもヒットしその名を広く知られるようになり、欧州を中心にツアーを行うようになる。日本でも度々演奏を行なっており、2018年作『Urban Dreamer』には日本の童謡「赤とんぼ」のジャズアレンジも収録された。
LRK Trio :
Evgeny Lebedev – piano, accordion
Anton Revnyuk – bass
Ignat Kravtsov – drums
Opensound Orchestra :
Stanislav Malyshev – conductor