ネオ・フォルクローレの傑作『El orden del espiral』
コロンビア出身で2008年からアルゼンチンで活動する女性ヴォーカリスト/作曲家カロル・バジェール(Karol Bayer)を中心とし、作詞作曲/ギターを担うセバスティアン・ロペス(Sebastián López)、ソロ作品なども人気の鍵盤奏者セバスティアン・マッキ(Sebastián Macchi)らアルゼンチン出身の器楽奏者たちとで構成されるグループ、ラ・コンティエンダ(La Contienda)。2013年に始動し、伝統曲のカヴァーを軸にした2016年のデビューEP『Un Viaje en la Noche』がアルゼンチンの国立芸術基金の現代音楽部門で2等賞を受賞した彼らが、2022年末に待望の完全オリジナル曲の新作『El orden del espiral』をリリースした。
今作は伝統的なラテンアメリカのフォルクローレの空気を纏いつつ、穏やかながらセンス良くジャズのニュアンスも織り交ぜた音楽は洗練されており、どこまでも清々しく澄み渡ったサウンドが美しい。クリスティアン・ボルトリ(Cristian Bórtoli)のダブルベースのあたたかな低音と、パーカッションも効果的に用いるゴンサロ・ディアス(Gonzalo Díaz)のドラムスが各曲の骨格を支え、セバスティアン・ロペスのナイロン弦ギター、セバスティアン・マッキのピアノが豊かなハーモニーを添える。カロル・バジェールは時に穏やかに、時には朗々と歌うが、その歌は常に真っ直ぐで魅力的だ。
全曲がカロル・バジェールとセバスティアン・ロペスの共作。
アルゼンチンのネオ・フォルクローレと呼ばれるシーンの音楽的な充実ぶりが伺える素晴らしい作品だ。
カルロス・アギーレのレーベル、Shagrada Medra からのリリース
このアルバムの完成までには長いプロセスがあり、さらにパンデミックによる中断もあった。
完成を後押ししたのがサンタフェの革新文化省(Ministerio de Innovación y Cultura de la Provincia de Santa Fe)の推進プログラムで、最終的にアルバムはアルゼンチン随一のアーティストであるカルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)が主宰するレーベル、シャグラダ・メドラ(Shagrada Medra)のカタログに加えられることになった。
アルバムのタイトルは“螺旋の秩序”の意味。自然界に現れる様々な螺旋の美しさは、古代より黄金比として知られ、人類も美術や建築、音楽などの芸術や数学の中でその美しさを探求してきた。螺旋とは普遍的かつ驚異的な印章のようなものである、とカロル・バジェールは説明している。
La Contienda :
Sebastián López – acoustic guitar, electric guitar
Karol Bayer – vocal
Cristian Bórtoli – contrabass
Sebastián Macchi – piano, Rhodes, vocal
Gonzalo Díaz – drums, percussion
Guests :
Alfonso Bekes – guitar (1, 4)
Nahuel Ramayo – vocal (2, 6)
Mauro Leyes – guitar (3)
Gaspar Macor – guitar (5)