カエターノに魅入られたクラリネットとギターのデュオ、ブラジルをジャズで描く初のアルバム

Ivan Sacerdote & Felipe Guedes - Festival de Jazz do Capão 2021

イヴァン・サセルドーチ&フェリピ・ゲヂスの初アルバム

カエターノ・ヴェローゾとのデュオ・アルバム『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』で一躍その名を知られることになったクラリネット奏者イヴァン・サセルドーチ(Ivan Sacerdote)が、 長年デュオを組むギタリストのフェリピ・ゲヂス(Felipe Guedes)と作ったアルバム『Festival de Jazz do Capão 2021』

このデュオの活動歴は長く、2019のデュオ・コンサートでは聴衆の中にカエターノ・ヴェローゾがいた。カエターノはデュオを“サルヴァドールの器楽の最高峰、生の音楽”と絶賛。以降、リオデジャネイロにあるカエターノのスタジオに彼らを招待するなど継続的にサポートするようになり、これが前出のイヴァンとのアルバム制作にもつながっている。

ブラジルの豊かな音楽文化をたどる充実の9曲

今作には全9曲が収録されており、二人のオリジナルが1曲ずつ、ほかは全てカヴァーとなっている。サンバ、ショーロ、ボサノヴァ…どれもブラジルの豊かな音楽文化から生まれた名曲たち。

ブラジル音楽界の重鎮を惚れさせたデュオの演奏は鳥肌ものの素晴らしさだ。
(1)「Brejeiro」や(8)「Um a Zero」はショーロのもっとも古典的で著名な楽曲として広く知られるものだが、リズミカルなガットギターに乗せたジャズ・クラリネットはこれらの楽曲の新たな魅力を引き出す。フェリピ・ゲヂスのギターはバッキングもソロも類稀なセンスで、特に高速で演奏される(8)「Um a Zero」での技巧などは目を見張るものがある。
そして二人の演奏が何より素晴らしいのは、決して超絶技巧だけに走らず、楽器の木の香りが伝わるような温もりをその音から感じさせてくれるところだ。

イヴァン・サセルドーチのオリジナル曲、(4)「Ciranda das Águas」

(3)「Lá Vem a Baiana」はジョアン・ジルベルト(João Gilberto)がレパートリーとしていたことで有名なドリヴァル・カイミ(Dorival Caymmi)作のサンバで、ここでは躍動する軽やかな演奏がとても魅力的なセッションになっている。

(6)「A Outra Banda da Terra」はカエターノ・ヴェローゾの曲。クラリネットの多重録音も用い、完成度の高いアンサンブルを作り上げている。

プロフィール

イヴァン・サセルドーチ(Ivan Sacerdote)はブラジル・バイーア州サルヴァドール出身。
12歳からクラリネットを始め、クラシック、ジャズ、ブラジル音楽などを学び、2006年にUFBA交響楽団のソリスト、2007年にバイーア交響楽団のソリストを務めるなどその才能を開花させてきた。2011年にショーロの伝統あるグループ Os Ingênuos に参加。その後もガブリエル・グロッシ(Gabriel Grossi)やホーザ・パッソス(Rosa Passos)など著名ミュージシャンとの共演を重ねてきた。2020年にカエターノ・ヴェローゾとのデュオアルバム『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』をリリースしている。

フェリピ・ゲヂス(Felipe Guedes)はブラジル・バイーア州サルヴァドール出身。
小さい頃から家に篭りがちだったという彼は、ジャマイカのレゲエ・シンガーのジミー・クリフ(Jimmy Cliff)と10年間活動を共にしたパーカッショニストの叔父ガビ・ゲヂス(Gabi Guedes)の勧めで打楽器を始める。家庭ではほかに叔母がギターを演奏しており、フェリピの音楽への好奇心を刺激した。その後彼は独学でギターを始め、フレーズやコードを探し、レコードやラジオから音楽を学んできたという。
現在はギターを軸としながら、他にベース、ドラムス、キーボード、トランペット、クラリネット、サックスを演奏するマルチ奏者として活躍している。

レチエレス・レイチ作曲の「Floresta Azul」を演奏するイヴァン・サセルドーチとフェリピ・ゲヂス。

Ivan Sacerdote – clarinet
Felipe Guedes – guitar

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