サンバやショーロの美しい結晶。クラウヂオ・ジョルジ&ギンガ、燻銀の初デュオ作

Cláudio Jorge & Guinga - Farinha do Mesmo Saco

ブラジルの巨匠二人が50年来の友情を経て制作した初のデュオ作

クラウヂオ・ジョルジ(Cláudio Jorge)ギンガ(Guinga)。ブラジル音楽界における二人の個性的な実力者によるデュオ・アルバム『Farinha do Mesmo Saco』が登場した。ともにリオデジャネイロ出身、年齢もほぼ同じ二人は50年ほど前、ジョアン・ノゲイラ(João Nogueira, 1941 – 2000)のアンサンブルで知り合った。当時、そのアンサンブルではギンガがギターを、クラウヂオ・ジョルジがコントラバスを演奏していたようだが、その共演はごく短いもので、以来二人が切望していた再会と共演がついに叶った形の作品だ。

アルバムにはそれぞれのオリジナルの楽曲が収録されている。その殆どは彼らの過去作の再演だ。ともにギターを弾き、互いの偉大な功績を讃え合うように交互に歌う。

クラウヂオ・ジョルジ作曲の(1)「Minha Alma Suburbana」

(2)「Mello Baloeiro」はギンガがモニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)らと行った初来日コンサート時に制作したアルバム『Japan Tour 2019』に初収録された曲で、ギンガとアナ・パエス(Anna Paes)の共作。そのアナ・パエスは(5)「Bom Bocado」でゲストとして歌っている。

(6)「Bilhete Para o Guinga」はクラウヂオ・ジョルジとジルソン・ペランゼッタ(Gilson Peranzzetta)によってこのアルバムのために書き下ろされたもの。

ラスト(11)「Domingueira」は本作唯一のクラウヂオ・ジョルジとギンガの共作曲。この二人でしか成し得ないであろう、独特の含蓄が味わい深い。

https://www.youtube.com/watch?v=pXNVOVE3nWE
二人の共作曲(11)「Domingueira」

Cláudio Jorge プロフィール

クラウヂオ・ジョルジは1949年リオデジャネイロ生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。20歳の頃からイズマエル・シルヴァ(Ismael Silva)やカルトーラ(Cartola)といったサンバの最重要作曲家のギタリストとしてキャリアを開始し、その後ネルソン・カヴァキーニョ(Nelson Cavaquinho)やクレメンチーナ・ヂ・ジーザス(Clementina de Jesus)らとの演奏など、50年以上にわたってブラジル音楽の第一線で活躍してきた。
サンバだけでなく、ジョアン・ドナート(João Donato)やカルロス・リラ(Carlos Lyra)、イヴァン・リンス(Ivan Lins)、セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)、小野リサといったボサノヴァやMPBのアーティストとも多数共演している。

彼の4枚目のアルバムとなった2019年作『Samba Jazz, de Raiz』は、翌年のラテングラミー賞の最優秀サンバ・アルバム部門を獲得した。

Guinga プロフィール

ギンガは1950年リオデジャネイロ生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。
若い頃は歯科医として医療に従事する傍ら、11歳のときに父に教わったことをきっかけに始めたギターや作曲に地道に取り組んだ。17歳のときに自作の「Sou Só Solidão」という曲でコンクールで高い評価を得ている。
その後1970年代にはブラジルの国民的歌手エリス・レジーナ(Elis Regina)やジョアン・ジルベルトの妻として知られるミウシャ(Miúcha)、さらにはフランスの映画音楽の巨匠ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)が彼の曲を録音するなど、作曲家として徐々にその名声を高めていった。

しかしリオ郊外の労働者階級の家庭に育った若いギンガはミュージシャンを本業としなかった。それが、安定とは程遠い職業だと知っていたからだ。彼は両親のためにも歯科医として働く道を選び、27歳のときには歯科医として月に8,000ドルの収入を得ていたと語っている。

音楽家として本格的に活動を開始したのは1990年代になってから。デビュー作は1991年の『Simples e Absurdo』、実に40代になってからの遅咲きデビューだった。
ギンガの従来の西洋音楽の常識を打ち破るような独特の作曲技法は、その音楽活動が活発になった1990年代以降徐々に世界中に知れ渡り、ブラジルのみならず世界中の音楽家たち(特に作曲家やクラシックギタリスト)に影響を与えた。

ギンガの代表曲のひとつ(9)「Mar de Maracanã」

Cláudio Jorge – guitar, vocal
Guinga – guitar, vocal

Guest :
Anna Paes – vocal (5)

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