まるで樹氷のような、息を呑む美しさ。Mammal Hands 5thアルバム『Gift from the Trees』

Mammal Hands - Gift from the Trees

北欧ジャズの深い美しさを湛えたMammal Handsの5th

サックス、ピアノ、ドラムスの3人から成るUKジャズ新世代トリオ、ママール・ハンズ(Mammal Hands)の通算5枚目となる新譜『Gift from the Trees』がリリースされた。今作は彼らとしては初めてレコーディングスタジオではなくウェールズの住宅で演奏・録音されたものとのことで、意識的にリラックスした環境の中で即興的なアイディアを試したり、より深く、より有機的な体験を求めて夜遅くまで過ごす機会を楽しみながら制作されたという。

レコーディングは冬と春の2回にわたって行われたというが、個人的にはこの作品からは冬の澄んだ空気、雪の結晶の美しい輝きが伝わってくるように感じる。アルバムタイトルである“樹からの贈り物”も、どことなく樹氷の清々しい美しさを感じさせるのだ。楽曲も短調の曲が多く、北欧的な空気を纏ったジャズとなっている。

『Gift from the Trees』のショート・フィルム

とりわけ、ジョーダン・スマート(Jordan Smart)のサックスの音色の美しさは特筆すべきものだ。とかく雄叫びをあげるような男性的なサックスが称賛されがちなジャズにおいて、彼の音色は繊細で優しく、強弱やヴィブラートの表現も卓越している。

Mammal Hands 略歴

ママル・ハンズ(Mammal Hands)はイングランド東部、ノーフォーク州都ノリッジ(Norwich)出身のジャズトリオ。バンド名は「哺乳類の手」の意味。
サックスのジョーダン・スマート(Jordan Smart)、ピアノのニック・スマート(Nick Smart)の兄弟と、ドラムス/パーカッションのジョセ・バレット(Jesse Barrett)という編成で、2014年に『Animalia』でUK新世代ジャズにおける最重要レーベル、Gondwana Records からデビューした。

ベーシストがいないが、その役割はピアノの左手が担う。楽曲は緻密で重厚なコンポジションに支えられているが、計算しつくされたものだけではなく、即興の偶然性の余白も大きく残している。
レーベルメイトであるGoGo PenguinやPortico Quartetとも全く異なる独自の音楽性を確立した、UK新世代ジャズの筆頭格だ。

Jordan Smart – saxophone
Nick Smart – piano
Jesse Barrett – drums

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