サンパウロの大所帯バンド Trupe Chá de Boldo 新作『Rua Rio』
2006年にサンパウロで結成された大所帯バンド、トゥルピ・シャ・ヂ・ボルド(Trupe Chá de Boldo)による6枚目のアルバム『Rua Rio』。同バンドの特長である雑多なジャンルが混ざり合ったブラジリアン・ロックはエネルギーに溢れており、表情豊かで何よりも愉しく、同時に控えめな複雑さも含んでおり良い意味でカオティックだ。
バンドは音楽家だけではなく、本業が建築家や経済学者、ジャーナリストもいるという12人編成。ここにさらに数名のゲスト歌手や楽器奏者が参加しサウンドを盛り上げる。収録の全10曲もサンバ、レゲエ、ロック、ファンク、ジャズなど多様なルーツを感じさせ、曲ごとに個性的。
アルバムタイトルはスペルの似た二つの単語から成る。「Rua」はstreet、道。「Rio」はriver、つまり川。シングル曲である(4)「Saracura」はサンパウロ市内を流れるサラクラ川を歌っている。サラクラ川はポルトガル語版Wikipediaでは1900年頃の写真でその存在を確認できるが、現在はほぼ暗渠として都市の中に埋まった水路となっているようで、街の歴史と共に街の道と一体化してきた小川に思いを馳せる。曲調は現代的なアレンジが施されてはいるが、サウダーヂ溢れるサンバの系譜だ。
アルバムは構想の期間を経て、2020年、パンデミックによる外出禁止令の最中で制作が開始された。
主題的ではないにせよ、(10)「A Resposta da Floresta」(森からの答え)や(3)「Vira Rio」(川を変える)、(8)「Mistérios para Ouvir」(耳を傾けるべき謎)などの楽曲には人間の活動による環境破壊への危機感が滲む。
パンデミックの間はメンバー同士オンラインでアイディアを交換し合い、レパートリーやアレンジメントがほとんど固まった2022年に対面でのミーティングを再開。同年5月から録音が始まり、2023年に完成した。
Trupe Chá de Boldo :
Ciça Góes – vocal
Filipe Nader – alto saxophone
Gustavo Cabelo – bass, guitar
Gustavo Galo – vocal
Guto Nogueira – percussion
Julia Valiengo – vocal
Leila Pereira – vocal
Marcos Grinspum Ferraz – tenor saxophone
Pedro Gongom – drums, percussion
Rafael Werblowsky – drums, percussion
Remi Chatain – baritone saxophone, soprano saxophone
Tomás Bastos – bass, guitar
Guests :
Thobias da Vai-Vai – vocal (4)
Iris da Selva – vocal (10)
Lucina- vocal (8)
Raquel Tobias – vocal (3)
Beto Villares – synthesizer
Jady Silva – repinique, repique de mão
William Tocalino – trombone
Larissa Oliveira – trumpet